Study: アハンカーラ(ahaṃkāra), ブッディ(buddhi), マナス(manas)

アハンカーラ ahaṃkāra「自我器官」

ブッディ buddhi「統覚器官」

マナス manas「思考器官」

ヨーガ学派では『ヨーガ・スートラ』がヨーガが心の作用の止滅と定義しているが、心の作用には正しい認識、誤った認識、分別、睡眠、記憶の5種類を数える。これらのうち、正しい認識とは知覚・推論・ことばという正しい認識手段から生起した認識で、誤った認識とは対象に基づかない認識で、分別とは対象に基づかないが、ことばに基づく認識であるとされる。サーンキヤ学派はbuddhi(統覚器官)、ahaṃkāra(自我器官)、manas(思考器官)という3種の内部器官を認める。5種の感覚器官(眼など)と5種の運動器官(手など)という外部器官は現在のものだけを対象とするのに対して、内部器官は過去・現在・未来のものを対象にする。buddhiの作用は「これは人である」などという対象の判断であり、ahaṃkāraの作用は「私はそれに関係している」という対象に対する自己の関係づけであり、manasの作用は「これは〜である」「これは〜でない」という対象に対する思考である。

岩波 哲学・思想事典. 1998. pp.516r-517l