Study: シュリーマド・バーガヴァタム(Śrīmad Bhāgavatam)

シュリーマド・バーガヴァタム(別名:バーガヴァタ・プラーナ (Bhāgavata Purāṇa), Śrīmad Bhāgavata Mahā Purāṇa, Śrīmad Bhāgavatam, Bhāgavata)

現存するプラーナのひとつ。「バーガヴァタム」という言葉は「至高の主に関する聖典(シャーストラ)」を意味する。12のスカンダ(編)から成っている。クリシュナ信仰に大きな影響を与えた。

プラーナとは、インドのヒンドゥー文化における様々な伝承を集めた文献群であると同時に、集められた伝承の総体も意味する。いくつかのプラーナ文献は、18の大プラーナと18の副プラーナ、計32のプラーナ文献の名前を列挙しているが、この列挙は相互に一致せず、実際の文献数はこれをはるかに超える。

プラーナにおいて扱われている主題は多岐にわたる。まず、伝承の総体としてのプラーナの古層に属する5つの主題、すなわち宇宙の創造、その帰滅と再創造、神々と仙人の系譜、人祖マヌたちの統治期、王統史があり、宇宙誌もこの層に含まれる。神々・聖仙・英雄たちの神話・伝説はプラーナの中核を占め、シヴァ派、ヴィシュヌ派の教義やヴェーダンタ、サーンキヤ、ヨーガ思想が、時には折衷的な形でしばしばその基調となっている。

法典群と共通する主題(各身分・人生期の義務、誓戒、聖地巡礼など)や専門的な論書と共通する主題(図像・建築・数学・天文学占星術・医学・修辞学・音楽など)も扱われる。

『バガヴァッド・ギーター』に傚う<ギーター>(gita. 歌)と、聖地・吉日月・神格・祭祀などのすばらしさを説く<マーハートミヤ>(mahatmya)は、特定のプラーナに帰属していても単独で流布することが多い。また、ある地域の神話的歴史を主に扱う作品もある。

岩波 哲学・思想事典. 1998. pp.1399-1400