Study: Does Life Exist on Venus? The Picture Becomes Cloudier With Time. New York Times Intl. Weekly (February 21, 2021)

タイトルは、「金星に生命体は存在するのか?予想図は時間の経過とともに不明瞭になる」。

・2019年秋、イギリス・ウェールズにあるカーディフ大学のJane Greaves氏らの研究グループは金星の大気からホスフィンが検出されたことを発表した。金星においてホスフィンが存在することを説明するのは、微生物によって生成されたこと以外の要因を示すのは困難であると言及した(ホスフィンが金星に存在する「高温高圧環境」以外の理由付けが必要という意味)。

・Greaves氏らは、2017年にはハワイの「ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)」での観測では大気中に20ppbのホスフィンが存在する計算結果を発表し、2019年にはチリの「アルマ望遠鏡」といった電波望遠鏡で金星を観測したところ、再度、大気中に10ppmのホスフィンが存在すると発表した。

・Greaves氏らによるホスフィン検出の発表には反証も出されており、観測結果がホスフィンではなく二酸化硫黄でも説明できるとの指摘もある。また、ホスフィン観測ライン(特異的波長吸収域)は、Greaves氏らの観測ライン(48 km付近)よりも25 km上空であるはずで、70〜80 km上空は雲頂面よりもずっと上空にある。

・金星は地表の温度は425℃を超える灼熱だが、原始の太陽系において金星は今の地球のように海があり、穏やかな気候であったことも示唆されている。火星でこそ、今では冷たく乾燥しているが、かつて水が流れたとも考えられる痕跡があるため、生物が存在する可能性は完全には否定できない。しかし、金星の地表は生物の生息には温度が高すぎると言われるのだが、地上から48 km付近では、30℃と快適な気温である。そのため、微生物がその高度周辺で数ヶ月漂うなら、それは増殖する(個体群を形成する)のに十分な期間である。一方で、雲周辺は硫酸が充満しており、太陽からの紫外線が直撃する。ただし、酸性雨がほぼ降らず乾燥した時には、生物にとって最適である。

カリフォルニア州立工科大学ポモナ校のRakesh Mogul氏らの研究グループは、1978年に取得されたアメリカ航空宇宙局NASA)の金星探査機による観測データを再評価したところ、金星の大気中にホスフィンをはじめとした生命活動にも関連した化学物質の存在を示す兆候が見つかったとする研究成果を発表した。
・一方で、2006年〜2014年の欧州宇宙機関の金星の軌道を回る宇宙船のデータには、ホスフィンは検出されておらず、ハワイのNASA望遠鏡にもそのデータは確認できなかったと報告もある。

・有力なデータが提示されるまで議論は平行線をたどるおそれがある。観測データが必要とされている。

・Mogul氏らは現在NASAで検討されている金星探査ミッション「DAVINCI+」に言及した上で、将来の探査によって金星大気中のガスやエアロゾルの組成が解明されることに期待を寄せている(他記事より抜粋)

 

キーワード

phosphine ホスフィン。分子式 PH3 で表される、リンと水素による無機化合物。

地球の自然界におけるホスフィン(リン化水素、PH3)は嫌気性の微生物によって生成される生命活動に由来する物物質である。木星土星では高温・高圧な内部で非生物的な過程で生成されたとみられるホスフィンが検出されているが、地球や金星のような岩石惑星において生物が関与せずにホスフィンが生成される過程は知られていない。