Study: Missions To Mars, The Moon And More. New York Times Intl. Weekly (January 21, 2021)

タイトルは、「火星へ、月へ、さらなるミッションが予定される」。(2021年1月21日の記事)

・昨年夏には、アラブ首長国連邦、中国、アメリカが無人探査機(ロボット型宇宙船)を火星へ向けて打ち上げた。2年おきに各国の無人探査機の打ち上げを実行したのには、地球と火星との距離が最も近くなる期間であったため、飛行時間の短縮を目論んだからである。

・この中で最初に火星に到着する予定なのは、アラブの探査機「ホープ」である。アラブ諸国では初となる本格的な探査機であり、火星の大気のデータを調査し、データを地球へ送信する。

・中国の探査機「Tianwen-1(天問1号)」は2月10日に火星に到着する予定である。火星の軌道上を飛行し、探査車を輸送する着陸船を5月に火星面に着陸させる予定である。このミッションが成功すれば、中国の宇宙開発事業の実績をより拡大することになる。昨年の「Chang's-5(嫦娥五号)」の月面着陸と岩石サンプル持ち帰りミッションに次ぐ偉業である。

アメリカは1972年以降月面に探査機を着陸させていないが、NASAは、商用有人輸送サービスとして民間企業数社と契約を結んでいる。その計画とは、無人宇宙船が貨物と顧客を月面に輸送するというものである。

・科学的な観点で最も重要な計画は、NASAが10月に予定しているハッブル宇宙望遠鏡の後継者であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げである。

・7月には、NASAのディディモスDidymosという小惑星へのミッション(DART)が予定されている

・10月には、Lucy計画の一環として、「トロヤ群」と呼ばれる、木星と同じような軌道で太陽の周りを回りながらも巨大惑星木星の引力の作用を受け続ける小惑星群を探査する予定である。このことは、太陽系の地球よりも軌道が外側にある惑星の形成に関する謎を解く手がかりの発見につながると期待されている。

・2020年、スペースXは、国際宇宙ステーションISS)に2人の乗員を送り込む有人テスト飛行を成功させた。さらに、有人宇宙船「クルードラゴン」を利用した民間の訓練を受けた乗員の商業輸送計画のために民間企業数社が協働している。そのうちの一社Axiomは、国際宇宙ステーションISS)に人類初の民間宇宙飛行士を送り込むことになるかもしれない。ヴァージン・ギャラクティックVirgin Galacticとブルー・オリジンBlue Originも、民間人に対して大気圏と宇宙空間の境界までの旅行を提供する可能性がある。

・2020年の夏には、ネオワイズ彗星が見られたり、冬至には木星土星コンジャンクション(合)が見られた。

・5月26日には、皆既月食が見られ、月が通常よりも地球に近いため、「スーパーブラッドムーン」とも呼ばれる。オーストラリア、太平洋諸島、アメリカ西部では綺麗な月蝕を見ることができる。

・北アメリカの大部分では、2024年には皆既日食(Total Solar Ecripse)が見られる。今年6月10日にはカナダとロシアの一部では、金環日食(Annular Solar Ecripse)が見られる。アメリ東海岸の日の出時刻には、部分的な金環日食が見られる。

 

キーワード

・Emirati Hope アラブ初の火星探査機「ホープ

2020年7月20日アラブ首長国連邦UAE)の火星探査機「HOPE(アラビア語で希望を意味する「アル・アマル」とも)」を搭載したH2Aロケットが、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。打ち上げ後、ロケットから無事に切り離された探査機は、約28日後に地球の軌道を離れ、自力で4億9300万キロを旅して、21年2月に火星の軌道に入る。UAEムハンマド・ビン・ラシド宇宙センターで開発されたHOPEは、アラブ諸国初の惑星間探査機である。

 

・Tianwen-1 火星探査ミッションで用いる探査機「天問1号」

中国が2020年7月23日に打ち上げに成功した火星探査ミッションで用いる探査機の名称である。この探査機は火星軌道を周回するオービターとランダー、探査車(マーズ・ローバー)から構成されている。


・Chang's-5 中国の月探査機「嫦娥五号」

中国政府は、2020年12月17日、月の試料が入った探査機「嫦娥五号」のカプセルが、予定どおり内モンゴル自治区の草原地帯に着陸したと発表した。カプセルの回収にも成功したという。月の試料を持ち帰る「サンプル・リターン」に成功したのは、米国、ソ連に続いて3か国目で、また1976年のソ連のミッション以来44年ぶりのこととなった。この成功により、中国と人類の太陽系探査は新たな段階を迎えた。

 

DART(Double Asteroid Redirection Test)二重小惑星ディディモスの軌道偏向を実験するミッション

アメリカ航空宇宙局NASA)によって計画されている、小惑星が地球に衝突するリスクに備え、宇宙機を衝突させて小惑星の軌道偏向を実験するミッションである。

 

・James Webb Space Telescope (JWST) ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となって開発を行っている赤外線観測用宇宙望遠鏡である。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機であるが、計画は度々延期され、打ち上げ予定日は2021年10月31日に再設定された。

 

・Didymos ディディモス 
太陽系の小惑星1996 GTの名称。アモール群に属する地球近傍小惑星。二重小惑星で、直径約800メートルのディディモスAと直径約160メートルのディディモスB(愛称ディディムーン)からなる。NASA(米航空宇宙局)とESA欧州宇宙機関)が、ディディモスBに無人探査機を衝突させ、軌道偏向を計測するAIDA計画を進めている。

 

・Lucy  NASAのルーシー計画

NASAのLucy(ルーシー)計画で探査予定の小惑星「エウリバテス」の周りを、直径1km未満の小さな衛星が回っていることが発見された。Lucy計画では「トロヤ群」と呼ばれる、木星と同じような軌道で太陽の周りを回っている小惑星群と、火星と木星の間にある「小惑星帯」にある小惑星1つを探査する予定である。

 

・Space X (Space Exploration Technologies Corp.) スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ。通称スペースX。
Space Xは、カリフォルニア州ホーソーンに本社を置くアメリカの航空宇宙メーカーであり、宇宙輸送サービス会社である他、衛星インターネットアクセスプロバイダでもある。火星の植民地化を可能にするための宇宙輸送コストの削減を目的に、2002年にイーロン・マスクによって設立された。SpaceXは、いくつかのロケットのほか、貨物宇宙船ドラゴンや衛星スターリンク(衛星インターネットアクセスを提供)を開発している。

 

・Axiom Space 米国のベンチャー企業アクシアム・スペース社

3人の民間人がに旅立つ可能性がある。宇宙旅行を手掛けるAxiom Spaceは米国時間1月26日、3人の民間人乗組員と同社のバイスプレジデントで米航空宇宙局(NASA)元宇宙飛行士のMichael Lopez-Alegria氏を、国際宇宙ステーションISS)に8日間滞在する旅に向けて2022年1月以降に送り出すと発表した。

 

・スペースXと協働する民間企業の一社Axiomは、2021年1月、2022年1月にSpaceX(スペースX)のDragon宇宙船とFalcon 9ロケットを使って国際宇宙ステーションISS)に飛び立つことが予定されている人類初の民間宇宙飛行士について発表した。

 

・Comet NEOWISE ネオワイズ彗星

NEOWISE彗星(C/2020 F3) は、赤外線観測衛星NEOWISEによって2020年に発見された長周期彗星である。