Study: A Great Blue Spot Past Jupiter's Clouds. New York Times. July 11, 2021

タイトルは、「大青斑が木星の雲頂部で確認される」

木星探査機ジュノーは、2016年7月4日、強力な放射線による衝撃にも耐え、木星の軌道への投入に成功した。この探査機は、非常に丈夫な構造をしており、すでに当初のミッションを完了させたが、NASAが4年間の運用延長を決定し、木星の軌道をさらに42周する予定である(今年1月には、当初7月31日に木星に落下する予定であったのだが)。今年6月には、木星最大の衛星であるガニメデ(Ganymede)へ突入した。
・ジュノーのミッションとして、木星の北極と南極で安定して発生する環状の嵐(渦)と惑星の磁場周辺に強く吹き付け内側深部へ流れこむ風の観測が実施された。その結果、北極周辺で8つの渦が、南極周辺で5つの渦が確認された。それらは、数年間持続し、直径約4,200 kmあり、数は一定していることが判明した。さらに、北半球の大気の模様と南半球の模様とは異なっていることも確認された。来年は、北極の8つの渦に接近観測する計画が立てられている。
・「大赤斑」についてもさらなる理解が進んだ。この巨大な嵐の渦は、数世紀にも渡り存在し、厚み320 km以上ある。このミッションにより「大青斑」の発見にもつながった。「大青斑」というのは、木星の磁場のマッピングの際に使われた計画上の名称である。撮影写真からは大青斑は見つからないが、磁場マップ上の暗青色地帯では、(赤道付近にも第二の南極があるのだが)、見えない磁場の線が合流していることが読み取れる。

・ジュノーの観測結果と過去の観測結果を比較すると、ここ数十年間、大青斑ではどの程度磁場の変化が起こっているかがわかる。大青斑の中心ではジェット気流により西へ風が吹くのに対して、斑点上部域と下部域では、反対向きの東向きの風が吹く。このことより、風は、気圧と温度が水素を導電体(イオン化する)に変えるのに十分高い領域まで広がることが示唆される。電流が磁場を作る。大青斑では、1年に1%の進度で磁場の強さが変化している。局所的に強くなったり、弱くなったりする。

・科学者らは、新しい謎について思考を働かせる。大青斑は大赤斑とほぼ同じ緯度に存在する。これら2体は関係し合っているのか、あるいはそれぞれ別の現象であるのかと。

・2000年の木星探査機「ガリレオ」以来20年以上ぶりに接近した探索機ジュノーからは、すでに画像が送られてきた。さらに、木星にとっての「月」である他の衛星イオとエウロパをフライバイ(近接接近観測)を実施する予定である。

 

キーワード

The Great Red Spot 大赤斑

木星は「巨大ガス惑星」で、地球のように固体の地表面をもたず、水素・ヘリウム・アンモニアなどを成分とする大気をまとっている。「大赤斑」とよばれる赤い大きな渦は、直径が地球1.3個分にもなる巨大な高気圧である。ジュノーの木星大気の3次元構造の調査により、大赤斑は「厚み」が320kmもあることが判明した。木星の渦は日々ダイナミックに変化している。木星は10時間で自転しているが、この高速の自転が乱気流やジェット気流を生み出す。ジュノーは木星の北極・南極の上を通過する軌道で周回しているが、木星の北極と南極には、多数の渦があることがわかり、「木星といえば縞模様」という今までのイメージを打ち砕いた木星の極域にある渦を作り出す強い風は、木星表面下3000kmほどでも吹き続けており、これによって大気がかき混ぜられているようだ。同じ巨大ガス惑星である土星の北極や南極には、こういった渦は見られない。ローマ神話で「ジュピター」は「雷神」だ。木星の雲の中では電気の嵐(放電現象)が起こっている。ジュノーは雲頂で発生した雷を初めて捉えた。(Yahooより)

 

Great Blue Spot 大青斑

木星探査機ジュノーのミッションを管理するNASAジェット推進研究所(JPL)は2019年5月20日木星の磁場が長い期間の中で変化する「永年変化(secular variation)」と呼ばれる現象を起こしていることを発見したと発表した。ジュノーチームは木星磁場の永年変化が起きる理由を探し、木星の大気(または部分的な)風の作用が最も良くその磁場の変化を説明することを見出した。木星の風は、表面から深さ3000kmに及び(注:木星には固体の表面はなく、地球の10倍の大気圧のところを惑星表面として定義する)、そこでは惑星の内部はガスから高伝導性の液体金属に変化する。それが磁場を剪断し、引き延ばして惑星の周りに運んでいると考えられている。木星の永年変化は、赤道近くにある肉眼では見えない「大青斑(Great Blue Spot)」で最も大きかった。強い局地的磁場を持つこの大青斑とこの緯度における強い帯状風が木星型世界の磁場に最大の永年変化をもたらしている。(fabcrossより

Kimberly Mooreたちの研究グループは、木星の表面から一定の深さまでの磁場のマップを作成し、それを分析して、木星の磁場がこれまでに知られている他の磁場とは大きく異なっていることを明らかにした。木星の内部では、磁束(空間内の曲面を通り抜ける磁場の流束)の大部分が帯電したダイナモ領域を離れて、北半球の狭い帯域を通り、赤道近くの大青班で木星の内部に戻っていた。それ以外の領域では、磁場がかなり弱かった。また、Mooreたちは、木星の非双極子磁場がほぼ北半球に限定され、南半球がほぼ双極子磁場になっていることを見いだした。Mooreたちは、地球のダイナモとは異なり、木星ダイナモは均一な厚い殻内で作動していないという考えを示している。(Natureより