Study:  Confirmation at Last: A Faraway Black Hole Swallowing a Dead Star. New York Times. Intl. Weekly. July 25, 2021.

タイトルは、「ついに確認:銀河系外でブラックホールが死んだ星を飲み込む」。

・2020年1月、ブラックホールが死んだ星を飲み込む現象が初めて観測された。その10日後、宇宙の別のセクタ(区画)で、同じ現象が観測された。

・この発見は、連星系(Binary Star System)に関する知識を埋め合わせる助けとなった。ここ20年間、アメリカのレーザー干渉計重力波検出器(LIGO)の天文学者らは、アインシュタイン一般相対性理論から導かれた予測と一致するような観測結果を探し続けてきたのだが、結果が得られていなかった。

・2015年9月には、重力波(Gravitation Wave)の強まりが観測された。巨大星がその生涯を全うした時点で超新星として爆発する場合に、星程度のサイズの2つのブラックホールが(時空構造の穴)衝突し合うことにより重力波が生じた。両ブラックホールは、最終的に合体するまでお互いに軌道を回っていた。

・2年後の2017年、LIGO中性子星(Neutron Star)の衝突を観測した。燃焼後の星のサイズは太陽よりも大きかったが、ブラックホールに衝突するには十分なサイズではなかった。

LIGOとイタリアのVIRGO(LIGOよりは小型のレーザー干渉計重力波観測器)との連携により、その爆発が起こった位置をピンポイントで観測可能となった。火の玉になった星から発せられた光線のうち電波からX線までの波長の範囲を観測できた。

重力波の観測により銀河系から離れた場所に連星が存在することが証明された。2020年1月5日に中性子星ブラックホールへの衝突が初めて観測された。2020年1月15日には、別の衝突が観測された。

・しかし、銀河系ではブラックホール中性子星の組み合わせが発見されないのかという疑問が残る。その要因として探査の方法が適切でないことや合体の運動速度があまりに速すぎて観測が難しく、残骸がないことも考えうる。

 

キーワード

LIGO and VIRGO アドバンストLIGO(ライゴ)とアドバンストVirgo(ヴィルゴ)
2020年1月5日,米国ルイジアナ州リビングストンにあるアドバンストLIGOとイタリアにあるアドバンストVirgoの2台の重力波検出器は、中性子星ブラックホールの連星からの重力波を観測した。渦巻を描いて中性子星ブラックホールが接近するインスパイラル軌道の最後の数回転とその後に中性子星ブラックホールが合体する現場を観測した。さらに,そのわずか10日後の1月15日に,米国ワシントン州ハンフォードにあるもう1台のアドバンストLIGOを含めた3台の検出器が2番目の中性子星ブラックホールのインスパイラル軌道と合体からの重力波を観測した。これらの新しいイベントは,GW200105とGW200115と呼ばれる。中性子星ブラックホールの組み合わせからの重力波が観測されたのはこれが初めてである。(KAGRA)(MITSUBISHI

 

Binary star 連星(れんせい)
2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体である。双子星(ふたごぼし)とも呼ばれる。普通の連星に用いるのと同じ手法を使うことによって、見えない伴星の質量を推定することができる。このような連星で伴星が見えないのは、伴星が非常に暗く主星の明るさに埋もれて検出できなかったり、中性子星のようにほとんど可視光を放出しない天体だったりするためである。場合によっては、見えない伴星がブラックホールである場合もある。(Wikipedia

 

Binary neutron star 中性子星連星
太陽のおよそ8倍から25倍の重い2つの星が連星として生まれ、死を迎えた後の姿が中性子星である。中性子星重力場はとても強いため、重力波が出る。重力波でエネルギーを放出すると、2つの中性子星は近づいていく。近くなるほど重力波が強くなり、最後に強くなり、最後には強力な重力波を出して、2つの中性子星が合体する。(小学館の図鑑NEO宇宙)

 

Binary black hole ブラックホール連星
ブラックホール同士が連星になったもの。もともとは、太陽の25倍よりも重い星同士の連星であったが、それらが死を迎えた後の姿である。中性子星連星と同じように、2つのブラックホールは、重力波を出しながら近づいていき、最後は非常に強い重力波を出して合体する。(小学館の図鑑NEO宇宙)

 

Gravitation Wave 重力波
アインシュタイン一般相対性理論によって存在が示唆されていた、重力そのものの波動のこと。一般相対性理論では重力は空間の曲率、つまりはゆがみです。重い物体があれば、それだけ空間がゆがみ、二つの重い物体が互いの周りを回転すると時空の歪みは波となって周囲に広がっていく。(mehori.com

 

Neutron star  中性子星
質量の大きな恒星が進化した最晩年の天体の一種である。中性子星は質量が太陽程度、直径20 km程度、大気の厚さはわずか1 m程度で、中性子が主な成分の天体である。(Wikipedia