Music: 5 ERAS 8820 Day 2 / B'z (2021)

 

<収録内容>
1. LOVE IS DEAD
2. おでかけしましょ
3. Don't Leave Mev
4. 闇の雨
5. YOU & I
6. 夢見が丘
7. love me, I love you
8. もうかりまっか
9. The Wild Wind
10. HOME
11. ミエナイチカラ ~INVISIBLE ONE~
12. スイマーよ!!
13. Liar! Liar!
14. さまよえる蒼い弾丸
15. Calling

B'zのライヴ映像が発売されました。過去の膨大な数の楽曲を5つの時期にわけて、無観客でのライヴ演奏が収録されています。まずは、DAY 2を購入しました。私は、2枚組アルバム『The 7th Blues』(1994年発売)が好きで、特に、「LOVE IS DEAD」というアルバムの冒頭を飾るスピーディでジャジーな曲が好きなのですが、いままであまりライヴでは演られていないのでDAY2を買いました。ちなみに、タイトルの「8820」とは、1988年のデビュー以来2020年まで音楽活動を継続する中で(19″88″~20″20″)、これらの時代をアーカイブ的に網羅したことを意味しています。

1994年〜95年は、B'zの転換期でもありました。シングルも「Don't Leave Me」、「MOTEL」と、ダークで内省的な楽曲が発表が続いた時期でもありました。

本作発売当時は長期のライブツアーによるメディア露出の激減やメンバーの長髪、稲葉は「内に向かって吐き出していた」とコメントし、松本も翌年のインタビューで「去年は内側に向けてパワーが炸裂してたからね」とコメントするなどヘヴィーなライブが重なり、現在ではメンバーは94年を「暗黒時代」と呼んでいる。(Wikpedia)

 「LOVE IS DEAD」を聴くと、いつもゲーテの小説『若きウェルテムの悩み』を思い出します。B'zの疾風怒濤の季節だったと思います。1995年1月17日には阪神淡路大震災があり、同年3月20日には地下鉄サリン事件がありました。94年〜95年の2年間は、世の中もまさに根底から揺るがされる災害と事件があった時期です。

内省的な時代といえば、今もそうですね。過去を振り返らざるをえない時代。今までのように浮かれた言動が馴染まない風潮。慎みながら、忍耐強く過ごすことが求められる期間。各個人が試されているかのような気もします。

2曲目の「おでかけしましょ」は、この時期にしては明るい曲です。歌詞がまさに寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」を思い出すのですが、何か関係あるのでしょうか。

無観客でも彼らのライブはやはり楽しいです。このライヴでは、「もうかりまっか」が演られており、松本さんは、スティーヴィー・レイ・ヴォーン・モデルのストラトで演奏しています。ギターのピックガードには「SRV」ではなく「TAK」の文字が印刷されています。

「ミエナイチカラ 〜INVISIBLE ONE〜」では、同シングルのジャケット写真でもお馴染みのMUSIC MANのエディー・ヴァン・ヘイレン・モデルのピンク色のギターがお披露目されています。実はこのギター、一時期、行方不明となっていたものの、楽器屋でたまたま見つかり、2018年に約20年ぶりに本人の元へ戻ってきたものです。

でも彼らが本当にすごいなと思うのは、1995年11月に発表された『LOOSE』の垢抜けた感じです。95年はシングル「ねがい」「love me, I love you」、96年には「MOVE」、「ミエナイチカラ」に代表されるように、前向きでアクティヴな曲調を発表しました。今回のライヴでも演じられている曲で、シングルカット予定でもあった「夢見が丘」があります。

大地は知らない ヒトのヨロコビカナシミ

出逢い 別れ 土に埋もれ
雨が止むように消えてゆく

この曲が歌詞を聴くと、色んなことを思い出させます。「愛」、「生」、「死」といったことを難しいことを難しく語らないスタイルなのですが、この曲は何か違うんですよね。何かに吹っ切れたかのようなB'zのアルバム『LOOSE』、しかし、「夢見が丘」には、過去は過去のものとしてしっかり心に刻んでから前に進もうという決意にもみて取れる詩が謳われています。ちなみに、ライヴでは、もう一人のギタリスト大賀好修さんが、ジミー・ペイジが「天国への階段」で使うことでも有名なダブルネックの12弦ギターでアルペジオを奏でています。

LOVE PHANTOM」(1995年)は、ライヴでは定番の人気曲です(今回はどのDAYにも収録なし)。『インタビュー・ウィズ・バンパイア』や『ドラキュラ』などの映画からインスピレーションを得たとされます。

少しのズレも許せない
せこい人間になっていたよ

B'zは、『RISKY』(1990)で「Vampire Woman」という曲があり、吸血鬼の女性に男が翻弄される内容のやや軽い歌詞でした。それに比べると「LOVE PHANTOM」では、シリアスな内容です。もしかすれば、ここにも当時の出来事が影響しているのかもしれません。ゲーテも自身の叶わぬ恋体験と、友人の死を組み合わせることで、小説「若きウェルテムの悩み」の構想を思いついたわけですが、B'zの歌詞は、小説のようだと思います。作詞者の実存があるようにもとれるし、誰かを想定して書いたものともとれます。他者の視点で描くこともまた活動を長続きさせる秘訣かもしれません。