Music: The Circle / B'z (2005)

 
 
 
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全作詞: 稲葉浩志、全作曲: 松本孝弘、全編曲: 松本孝弘稲葉浩志徳永暁人
1. 「THE CIRCLE」 1:57
2. 「X」 3:55
3. 「パルス」 2:45
4. 「愛のバクダン」 4:24
5. 「Fly The Flag」 3:45
6. 「アクアブルー」 3:20
7. 「睡蓮」 4:11
8. 「Sanctuary」 3:43
9. 「Fever」 4:17
10. 「白い火花」 3:59
11. 「イカロス」 3:32
12. 「BLACK AND WHITE」 4:24
13. 「Brighter Day」 3:57
合計時間:48:09

参加ミュージシャン
松本孝弘:ギター、全曲作曲・編曲
稲葉浩志:ボーカル、全曲作詞・編曲
徳永暁人:ベース、全曲編曲
シェーン・ガラース:ドラム (#1-11.13)、パーカッション
ブライアン・ティッシー:ドラム (#12)

 

2005年4月6日にリリースされた14作目のフルレングス・アルバム。アルバム全体の雰囲気でいうと、おそらくB'z史上最もアジアンチックな1枚でしょう。アルバムは、インドチックな曲「The Circle」で幕を開けます。バックのコーラスで「オームOM」と歌っています。ちなみに、仮タイトルは、「surya」(ヒンディー語「太陽」を意味する)だったそうです。

それに続く「X」という曲は、「輪廻転生」や「破滅と再生」を思わせる内容の歌詞です。これもインド神話のコンセプトですし、円環的な世界観を思わせます。

3曲目「パルス」は、いつものB'zらしいキャッチーでノリのいい曲に変わります。作詞を担当し、ボーカリストでもある稲葉浩志さんは、どこかのインタビューで、「日本語にしか出せない独特の響きやニュアンスがある」と語っていました。あれだけ英語が堪能な人が言うのだから説得力があります。サビの”どっくんどっくん ふるえる”というところなんか多分そうだと思います。「擬音語」に関しては、B'zは以前より増えたように思うんです。大人が会話で多用すると、子どもっぽく聞こえるけれど、音楽にのせられると、日本語の「擬音語」や「擬態語」というのは、実は相性良かったりするのかもしれません。「パルス(脈)」も、サンスクリット語で流れを意味する「ナーディ」や、気息と訳される「プラーナ」にも関連していなくもないと思いました。

7曲目の「睡蓮」はアジアでも東アジアの中国、台湾あたりの雰囲気を持つ曲です。松本孝弘さんのソロに「華」(2002)というアジアンチックなアルバムがあって、もしかして、このあたりの雰囲気を踏襲しているのかなと思わせます。

8曲目の「Sanctuary」もスピリチュアルなものを思わせます。タイトルはすぐに浮かんだけれど、作詞には苦労したようです。Hello Helloと2回繰り返すとニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」を思い出しますね。

11曲目の「イカロス」については、「アテネオリンピックの時に本屋さんでギリシャ神話を買ってきて、まぁオリンピックとどんどん関係なくなってったけどいいなぁと思った。」と語っています。イカロスは、洋楽でも度々題材にされるギリシア神話の若者です。父ダイダロスの考案した蝋づけの翼でクレタ島から脱出しましたが、あまりに高く飛んだため、太陽の熱で蝋が溶け、海中に落ちて死んでしまいます。Iron Maidenの「Flight of Icarus」は有名です。

12曲目の「BLACK AND WHITE」は、マイケル・ジャクソンの「Black or White」という、肌の色なんか関係ないと黒人と白人の融和を歌った名曲を思わせますが、B'zは「白黒つけるのは大切なことなんだけれど、すべてのことでそれは必要なのか、それで誰が幸せになるのか」と語っています。線引きをするのではなく、多様性を尊重するという意味では、アジアの思想も想起させます。

全編を通して、抽象的でスケールの大きな印象を受けます。「来世」「愛」「魂」「時」「善悪」「瞬間」「破滅」「再生」「森羅万象」と、概念的な用語が多いです。

アルバム録音時期の2004年10月 - 2005年2月、リリース時の2005年4月6日は、ボーカルの稲葉さんが、40歳〜41歳で、厄年にあたる年齢でもあるので、もしかすれば、そういうことも影響したのかもしれません。初期の頃のように、具体的な英雄への憧憬を思わせるくだりはほぼなく、達観の域ですね。孔子の「四十にして惑わず」を具現化しています。