Music: Pitfalls / Leprous (2019)

 
 
 
 
 
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A post shared by Shuji Kuroda (@lalakoora)

No.    Title    Music&Lyrics    Length
1.    "Below" Music & Lyrics by Einar Solberg  5:53
2.    "I Lose Hope" Music by Solberg, Lyrics by Tor Oddmund Suhrke  4:44
3.    "Observe the Train" Music & Lyrics by Solberg  5:08
4.    "By My Throne"  Music by Solberg, Lyrics by Suhrke  5:45
5.    "Alleviate"  Music & Lyrics by Solberg  3:42
6.    "At the Bottom"  Music by Solberg, Lyrics by Suhrke  7:21
7.    "Distant Bells"  Lyrics by Solberg, Music by Simen Børven & Solberg 7:23
8.    "Foreigner" Music & Lyrics by Solberg 3:52
9.    "The Sky Is Red" Music & Lyrics by Solberg 11:22
Total length:    55:10[32]

Leprous
Einar Solberg – vocals, keyboards, production
Tor Oddmund Suhrke – guitars
Robin Ognedal – guitars
Simen Daniel Lindstad Børven – bass
Baard Kolstad – drums

Additional musicians
Raphael Weinroth-Browne – cello
Chris Baum – violin

ノルウェープログレッシヴ・メタル・バンド、Leprous(レプラス)の新作『Aphelion』がとても素晴らしいので、Spotifyでヘビロテしています。前作『Pitfalls』から2年振りの新作であり通算7枚目のアルバムです。タイトルのAphelion(アフィリオン)とは、惑星、彗星などの天体が、太陽をまわる 軌道上で太陽から最も遠ざかる点(=遠日点)のことです。Leprous は、伝説のブラック・メタル・バンド、エンペラーのフロントマンであるイーサーンのバックバンドだったことでも知られています。

今回手にしたのは、前作の『Pitfalls』のレコードです。アルバムジャケットに、仏像らしきシルエットと、たて笛を吹く人物が肩に乗っています。ヴォーカルのソルベルグ仏陀の姿をマインドフルネスとフルート奏者を Train of Thoughht(考えのもとになる筋道)として表現していると解釈しています。エイジアンチックな印象を受けるデザインですが、音楽は特にエイジアンテイストではありませんが、曼荼羅的な楽曲の多様性が高さと内省する歌詞の内容からは、東洋の思想を思わせます。

Leprousは、6作目『Piffalls』あたりからその多様度の高く、深い音楽性の萌芽が見え始めたという意味で、非常に重要な作品と思われます。北欧のミュージシャンは、音楽的素養の豊かさが特徴で、クラシック、ジャズ、エレクトロニカなど各ジャンルの音楽に精通しています。マルチなプレイヤーも多いです。これまでにも、才能豊かなバンドメンバーがいい意味で自由にやった結果、メタルの枠に囚われない音楽を提示するまで発展することは珍しいことではありませんでしたが、Laprousも例外ではありません。

2019年10月25日リリース、レコーディング期間は比較的長く、同年2月〜7月の約半年間、場所はスウェーデンストックホルムのGhostward Studiosで行われました。

本作は前作までとは違い、あらかじめ手法や目的などを決めずに制作をスタートさせました。電子音楽のリズムとベースに、メンバーは楽器を重ねていきました。しかし、予定した13曲のうち9曲までしか完成させられませんでした。80日間スタジオに閉じこもったEinar Solberg(Vo, Key)は、お気に入りの9曲に注力し、それぞれの楽曲が独自の色を持つように取り組みました。ナイロンギターを採用した楽曲もあり、チェロ奏者、ヴァイオリニスト、クラシック合唱団も楽曲に彩を添えています。Solberg(Vo, Key)は、9曲中6曲の作詞作曲しているのですが、製作中にうつ病を患ったり、不安感にも苛まれたそうです。(次作製作時には回復するのですが)

方向性をあらかじめ決めなかったこと、またエレクトロベースにボーカルやエレキギターを重ねていったことからも、本作はLeprousの方向性をガラっと変える作品となりました。音楽性はとても斬新です。エレクトロ・クラブミュージックを骨子(構造)として組み込んでいます。

前作『Malina』(2017)までは、8弦ギターが使用されるなど、技巧派のメタルの代表格としてOpeth、Purcupine Treeとともにプログレッシグ・メタルにカテゴライズされてきたのですが、本作からは8弦ギターの使用度を下げ、アコギを採用しています。

9曲中6曲をてがけたEinar Solberg(Vo, Key)は元々、RadioheadMassive AttackThe Prodigyあたりからの影響を公言しています。

残り3曲をてがけたTor Oddmund Suhrke(g)は、The Mars VoltaOmar Rodríguez-López, Opethの Mikael Åkerfeldt, Porcupine TreeのSteven Wilson、The Dillinger Escape PlanのBen Weinman からの影響を公言しています。

”Below”や"I Lose Hope"、"By My Throne"、"Alleviate"、"Distant Bells"に顕著なように本作における7曲目までの各曲でのサウンド構築・ビート構築にはそのMassive AttackやHooverphonic、Portishead、Lambあたりが展開しているトリップホップと同種のものが感じられます。

では、なぜ「プログレッシヴ(進歩的で)」な「ヘヴィ・メタル」なのかと疑問になりそうですが、曲の展開がドラマチックで、歪んだギターリフがベースになっているからです。楽曲を引っ張るSolbergのVoの、激情と冷静の使い分けが、全体の作風と完璧にマッチしており、イギリスのEditorsのVoであるTom Smithにも通じるようなファルセットが楽曲に透明感を与え、エレクトロビートの上にいい意味で無機質にのります。

1曲目「Below」は、最初に書かれた曲で、当初はピアノとボーカルで組み立てられました。そのミュージックビデオはDariusz Szermanowiczの監督で、ポーランドヴロツワフで撮影されました。

2曲目「I Lose Hope」は当初は手応えを感じていませんでしたが、スタジオで新たな可能性に到達し、その時点でベースのボルヴェン(Børven)とドラマーのバード・コルスタッド(Baard Kolstad) がヒップホップを彷彿とさせるグルーヴ感を生み出しました。

3曲目「Observe the Train」は、納得いく結果を得るために、試行錯誤されました。ソルベルグによれば、それは自分の思考の流れを意識を向けること(マインドフルネス)についてです。「戦いを止め、絶望を受け入れ始める」ことの必要性が下地になっています。

4曲目「By My Throne」は、Solberg(Vo, Key)作曲、Tor Oddmund Suhrke(g)による作詞です。前作までに比べると作詞を担当する割合が、Solbergが増えており、今作ではSuhrke(g)は、3曲に留まっている点も変化のひとつです。ボーカルのソルベルグが、深く内省し、ゾーンに入っていたことを物語っているかもしれません。変化の時にはこのように誰かが、深く深くから井戸の底で自分を見つめるということも珍しい話ではありません。このアルバムでのスタイルが、自作で結実することになります。

5曲目「Alleviate」に不満を持っていたソルベルグは、ポップベースのコーラスコード進行とベース音を除いてすべてを破棄しましたが、後にボーカルラインを変えることで改善されました。Troll Toftenesがこの曲のビデオを指揮しました。Weinroth-Browneは、「Alleviate」するためにハーモニック要素とピチカート要素を挿入しました。

6曲目「At the Bottom」と7曲目「Distant Bells」でチェリストのWeinroth-Browneのソロは即興で演奏されました。本アルバムの大半はコルスタッド(ds)による生ドラムですが、「Below」、「At the Bottom」、「DistantBells」は電子ドラムを使用しています。後者の楽器は、北欧のジャズとシンフォニックポップのバックグラウンドの影響を受けて、何もないところから何かを作成するというアイデアを利用して、ボルヴェン(b)によって作曲されました。彼は最初にグランドピアノを使用して、ダイナミクス(音の厚み、強度)が低いにもかかわらず強度を維持しました。Suhrke(g)が予備スケッチを行いました。Solberg(vo, key)はメロディー、ボーカルライン、歌詞、およびいくつかの編曲をもたらしました。

8曲目「Foreigner」を組み込むかどうかについては疑問がありましたが、彼らはそれが7曲目「Distant Bells」と楽曲終盤とうまくつながりがあることがわかりました。

9曲目「The Sky Is Red」では、セルビアベオグラードにあるクラシック合唱団のコーラスが何十にも重ね録りされ厚みを出しています。ソルベルグ(vo, key)が没頭状態(ゾーンに入った時)、一気に曲が完成しました。

 

 

 


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