Study: Enhanced squalene production by modulation of pathways consuming squalene and its precursor (in press)

スクアレン(squalene) とは、トリテルペンに属する油性物質です。深海鮫の肝油やオリーブ油に含まれます。抗酸化、抗がん、抗菌作用を示すため医薬品に利用されたり、無色の液体で潤滑性に優れ、クリームなど化粧品の油剤や皮膚の保湿剤、軟膏、座薬などの製造に使用されます。また様々な化学物質の前駆体でもあり、その利用価値は高いです。

しかし、深海鮫が絶滅危惧種であるなど生物資源の枯渇の観点から、持続可能性のある生産方法が求められており、微生物の分野で探索が続けられてきました。

代謝工学的には、ファルネシル二リン酸(FPP)がスクアレンの直接の前駆体であり、非メバロン酸経路とメバロン酸経路を経て供給されます。スクアレンはさらにステロールに変換され、膜の統合に不可欠とされます。

スクアレンの微生物による生産は、細菌(大腸菌、微細藻類(Aurantiochytrium sp.)、酵母(Saccharomyces cerevisiae、Yarrowia lipolytica)など様々な生物で報告されています。このうち、出芽酵母S. cerevisiaeは、一般に安全とされており(GRAS)、低pH、浸透圧ストレス、ファージ感染に対して高い耐性を示すことから、工業的な大規模スクアレン生産に有利であると考えられています。

本研究では、出芽酵母遺伝子工学ないし代謝工学的アプローチにより、スクアレンの大量生産のための基礎研究を行っています。

ちなみに、鮫肝油については、古くから民間薬でヘミングウェイの『老人と海』でも描写されています。

 

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