Books: 地球の歩き方〜ジョジョの奇妙な冒険

 

ジョジョに夢中になっていた時期があります。中性的な風貌、洋楽かぶれなキャラのネーミング、途中から読むとストーリーがわからないなど、好き嫌いの分かれる漫画かも知れません。それゆえに、好きな人は本当に好きだと思います。

初期から3部くらいまでは格闘物の漫画ぽくあり、北斗の拳のモノマネ?とも思えますが、ヨーロッパやエジプト、南アジア、東南アジア、中東を舞台にしており、風景の描写がリアルです。現地の匂い、色、音、味、空気感の5感に加え、怪しさ(霊性)の第6感まで伝わってきます。それもそのはず、荒木飛呂彦先生が、実際に現地を旅行しているからです。荒木氏は、ロマンだけで現地に行ってみるというミーハーなところがあるそうです。しかし、海外旅行が好きな人って、案外、「思い立ったが吉日」のスタンスで出かけていると思います。勢いと、フットワークが命です。

荒木氏は、イタリアには思い入れが強いそうで、確かに、ルネッサンス期の彫刻と、ジョジョのキャラの出立(ジョジョ立ち)をみると、親和性があります。ジョジョが他の漫画と違うところは、アカデミックなところです。どこか高尚な雰囲気が漂います。例えば、3部で、ディオ成敗のためにエジプトに出かけるストーリー展開があるのですが、ここでタロットカードや古代エジプト9栄神をモチーフにした敵キャラが出てきます。気になる人は、深掘りをするかも知れません。まるで、ロック・ミュージシャンが、神話やおとぎ話、史実をモチーフに曲を書くような感じです。

現代のインド、中世ヨーロッパ、ローマ時代、ルネッサンス期のイタリア、古代エジプトと、ミステリアスな題材で満載なのがジョジョに魅力です。徹底的に写実的でありながら、どこか奇妙な印象を与えるのが荒木飛呂彦の世界です。荒木氏が描くと、表面張力でさえ、何かの魔法に見えてしまいます。テレビゲームでさえ、特殊能力に見えてしまいます。荒木マジック満載です。

私も、日本史よりも世界史を選択したい。アメリカよりもヨーロッパに行きたい。エジプトかインドには必ず行かなくては。そう思い込んだのは、確実に、ジョジョの影響があったと思います。今思えば、「奇妙な選択」を繰り返してきたのかも知れませんが。