Books: ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン / 荒木飛呂彦

 

第5部に続いて第6部を読みました。今回は、空条承太郎の娘・空条徐倫(くうじょう ジョリーン〈ジョジョ〉)、女の子が主人公です。時代の変化から、「女性にパンチを食らわしたり、腕を切られたり、そういうバイオレンス描写ができるようになったのはやっぱり徐倫からなので。それまではなかなかできなかったですからね。」と作者は語っています。

舞台は2011年のアメリカ・フロリダ州。州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所(G.D.st刑務所)(通称:水族館)から物語は始まります。無実の罪を着せられた空条徐倫が収監されています。これは、カリフォルニア州アルカトラズ島の刑務所をモデルにしています。荒木氏が実際に取材見学に訪れたのは、フロリダの刑務所です。「僕が徐倫なら、3時間で壊れていたかも」とツアー後に感想を述べています。

ジョジョの場合、スタンドの能力をいかに伝染させるかというのが、一つのポイントになりますが、このストーリーでは、「スタンド能力」をDISC化することで、抜き取り、持ち運び、再生可能になっています。

作者も語るように、ジョジョの主人公中最もタフな存在かも知れません。肉弾戦もさることながら、メンタルな意味での試練がすごいです。刑務所という閉鎖経ゆえの見えないヒエラルキー、いじめが日常茶飯事で、まさに不条理な世界です。

空条承太郎が描かれるのがとても嬉しいですね。やはりかっこいい。「寡黙」とは彼のためにある言葉でしょう。私の憧れの人物像です。しかも、今は海洋学の博士という設定です。父と娘の確執と和解が描かれます。

「ストーン」は石の牢獄、「オーシャン(海)」は女性の象徴。父・空条承太郎が、娘をかばって、スタンドと記憶を奪われ、仮死状態になるのは、石化を象徴しているようですし、その石化から解き放つために奮闘する徐倫のスタンド「ストーン・フリー」は、石から解放させる、液体化(海の水)のメタファーとも解釈できます。

荒木氏の漫画は、敵キャラに魅力があります。元々、推理小説、サスペンス、ホラー映画がお好きで、知能犯のストーリーにも詳しいようなので、敵キャラも、バリエーションに富んでいます。全ての敵キャラが強いわけではないですが、「強さって何?」って思わせる対戦ばかりです。敵キャラが、「勝ち組」のセリフ「底辺からのしあがってきた叩き上げの成功者」のセリフを吐く場面が多いように思います。読者は、一瞬そうかなと思ったり、心の中ではそう感じている若者も多いかも知れません。ただ、それは勝ったと思った時に、思わず出てしまう言葉であり、根拠のないセリフであったりします。舞い上がっているのですね。

その意味では、DIOと言う人物はいつも主人公の上手を行きます。シャーロック・ホームズで言えば、モリアーティ的存在です。

ワーグナーの「ニーベルングの指環」を観ているような気持ちにもなります。第6部は、「愛による救済」が描かれているとも解釈できます。ワーグナーも、イタリアのラ・スペツィア滞在中に「霊感」を体験して、「ニーベルングの指環」の「ラインの黄金」を制作したそうですが、荒木氏もイタリアが創作の土台になったと語ります。

 
 
 
 
 
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