Books: ジョジョの奇妙な冒険 II ゴールデンハート&ゴールデンリング / 荒木飛呂彦、大塚ギチ、宮 昌太朗(2001)

 

ジョジョの5部「黄金の風」のキャラとストーリーを下地にしながらも、パラレルストーリーを小説として書き下ろしたものです。小説家のアイディアしたキャラを、荒木氏が挿絵程度に荒木氏がイラストを書き下ろしています。ですので、敵キャラのイラストはあります。

小説特有の内面での心の動きが描かれており、これはこれで楽しめました。漫画では、荒木氏本人がどうしても描けなかったストーリーがあったことを告白しています。それは「仲間の裏切り」だったといいます。他の作家に描いてもらうことで、キャラの新たな一面が浮き彫りになります。第5部の場合、主人公の彼らにとって「組織パッショーネ」を裏切ることは、育ての親を裏切るに等しい行為であり、苦痛の決断を強いられました。「何が正義か」、その時点ではわからず、ただ仲間を信じることが動機になり、前に進んで行った彼らです。しかし、ここでは、パンナコッタ・フーゴは違いました。二重の裏切りを決断しました。それにしても、フーゴのスタンドによる攻撃は、まるで地下鉄サリン事件か、バイオテロを想起させます。「時代の陰は、漫画に映る。」そんな印象を受けました。

ジョジョの場合、味方メンバーの中に、采配を振る人物や、行動を支配する人物がいないのが醍醐味です。しかし、霊的な何かには導かれており、敵の出現という試練は絶え間なく与えられ続けます。少年の通過儀礼(イニシエーション)の邪魔をする「大人」や「ご老人」は、荒木漫画にはいません。

第3部「スターダストクルセイダーズ」では、空条承太郎は、祖父のジョセフ・ジョースターのことを、いつも「ジジイ!」と呼びますし、第6部「ストーンオーシャン」では、ジョーリンは、父親の承太郎のことを、「クソ親父」だと思っています。

「これですよこれ!これこそ このモハメド・アヴドゥルのイメージ!」

と、アヴドゥル風に言いたくなります。彼らの人生を台無しにするのは、敵のスタンドではなく、実は「大人」たちなのかも知れません。荒木氏はその邪魔を描かず、主人公たちがスタンド(自立する)することを描いています。