Books: NHK大河ドラマ歴史ハンドブック〜鎌倉殿の13人: 北条義時とその時代 / NHK出版(2022)

 

今頃になって撮り溜めしていたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見直しています。源平物は、播磨地方の太鼓屋台の狭間彫刻の題目にも多く見られるので、あの狭間彫刻は、このシーンだったのかと思いながら見ています。

例えば、屋台の狭間彫刻の題目に「源頼朝の朽木隠れ」があります。源頼朝らは石橋山の戦いに敗れて平氏から身を隠しました。たまたま大きな倒木があったので、その洞に隠れて八幡大菩薩に祈念します。追手の梶原景時に見つかりますが、見逃してもらいます。これは、上手く隠れることの大切さよりも、八幡大菩薩に祈願したことによるご利益があったことを伝える話かもしれません。

播磨の祭礼の起源には放生会や休漁期に起源を持つものもあるといいます。狭間彫刻に源頼朝鶴岡八幡宮が散見されるのはそのためでしょうか。清和源氏桓武平氏など全国の武家から武運の神(武神)「弓矢八幡」として崇敬を集めました。

宇治の先陣争いの狭間彫刻で有名な梶原景季。景季は梶原景時の長男。鎌倉殿の13人では具体的な描写はなく、あくまで敵の木曽義仲の軍を気を逸らす囮作戦との位置付け。

木曽義仲巴御前の題目も多いですが、滋賀県木曽義仲のお墓のすぐ横には松尾芭蕉の墓があると知り、とても興味を持ちました。

火牛を使った倶利伽羅峠の戦いの狭間彫刻は、御幸屋台でしょうか。木曾義仲の火牛作戦は、のちに源義経の一ノ谷の奇襲作戦のヒントになったのではと思ったりも。

鎌倉殿の13人のテーマとも言える「忠義」と「そそのかし」。建前と本音。公と私。私利私欲が動機であっても勝てば官軍。当時の御家人は何を信じて生きたんでしょうか。

鎌倉殿の13人でたびたび出てくる「呪詛」。現代では非科学的と言われそうな分野であるけど、菅原道真以来、日本の中世ではそれなりに真実味があったのかもしれないです。特に明日どうなるかもわからない武士にとっては縁起担ぎや神仏崇拝は欠かせない行為だったのでしょう。

日本人の美意識の原型は室町時代に見られるとも言われるが、武士の美学は鎌倉時代に原型が生まれたのかもと思ったり。鎌倉幕府を支えたのは坂東武者と言われる箱根の坂、足柄峠より東の国の武士たち。今でいう関東。

知勇兼備で武士の鑑と言われた武蔵の畠山重忠(中川 大志)。鎌倉殿の13人では、戦国時代らしい撮影で感動のワンシーンでした。坂東武者であるのは事実ですが、元は平家とのつながりが深い人物。真っ直ぐな人物ほど陰謀にはめられやすいのもこのドラマの特徴。この辺とても歯痒いです。武蔵の畠山重忠もまたこれぞ武士の中の武士と言える人物です。

和田義盛 (横田 栄司)は、三浦義澄の甥で、武骨な坂東武者の中でも、豪快さと勇猛さは指折りです。北条氏に歯向かい、滅ぼされるラストサムライと言える最後の御家人です。木曽義仲に支える巴御前は、宇治川の戦い、粟津の戦い時に敵方の和田義盛の妻となり、鎌倉でともに過ごし、やがて朝比奈義秀を産みます。「鎌倉殿の13人」では、巴御前の出番が多く、もしかしたら三谷幸喜氏お気に入りの歴史キャラかもしれません。

鎌倉殿の13人が下地にしたのは「吾妻鏡」。日本の武家政権の最初の記録と評される。北条氏が編纂に関わったためバイアスはあるものの、何を美しいとしたか、どんな生き様を善きものとしたかを深読みすることもできるかもしれません。吾妻鏡を基調としつつも、三谷幸喜氏特有のシニカルさ、ブラックユーモアを加えているものの、要所要所で武士の生き様の美しさにもフォーカスを置いていて、泣かせる場面も多々あります。

鎌倉時代中期には北条義時武内宿禰(たけしうちのすくね)の化身だったとの言説まで流布される。武内宿禰は景行・成務・仲哀・応神・仁徳の5代(第12代から第16代)の各天皇に仕えたという伝説上の忠臣。武内宿禰播州祭り屋台では灘の東山屋台の露盤彫刻で見られます。

義家の息子、公暁ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟でいうなら、まさにスメルジャコフ。北条義時はイワン。源実朝はアリョーシャ。源頼家はドミートリィかな?いや、イワンは三浦義村とするなら、北条義時が父フョードルかな?と色々考えてしまいます。

いずれにせよ、公暁はどうしてそんなことを?と思わせる大事件を起こす。一方で、北条義時のメンタルの強さはどこから?とも思います。生まれつき、ああいう人もいるのでしょうか。

脚本を手がけた三谷幸喜氏はゴッドファーザーの雰囲気も取り入れたそうですが、確かにと思う部分多々。後半の北条義時を映す陰鬱な感じです。義時の妹「実衣」(宮澤エマ)が髪止めに、鮮やかに赤のものをつけているのですが、この辺は、黒澤明へのオマージュかと思ったり。

それにしても、姫方の美しさとたくましさも見どころです。三谷幸喜氏の現代風アレンジかもしれないですが、主人をたきつけたり、鋭いツッコミで場を和ませたり、一途に亡き許婚を思ったりと、物語が面白いのは女性タレントの名演技の賜物かもしれません。

播磨の網干地区にもゆかりのある禅僧の文覚のキャラが濃すぎて面白かったです。胡散臭かったですが、願念の強さが信仰心の強さに回心されたいい例かもしれません。

鎌倉時代には禅宗が広まり始めます。特に、武家の間で流行りました。京から鎌倉が離れていたことも定着した一因かもしれませんが、何かにすがって生きるのではなく、自分を律しながら生きることを説く教えが武人の生き様とマッチしたのかもしれません。

鎌倉に関連したものが播磨地方にもないかと思いましたが、特にわからず。官兵衛の時とは違いますね。やはり遠い国の話かもしれません。ただし、曽我兄弟の仇討ちは、赤穂浪士の仇討ちも思い出させますし、源頼朝を支えた北条義時は、秀吉と官兵衛の関係も思わせます。

大河ドラマ、毎年は見ていないですが、黒田官兵衛明智光秀北条義時と、歴史的には脇役をドラマ化した方が面白かったです。暴君を補佐する中間管理職の悲哀が現代社会と重なるのでしょうか。ヒーローなき現代社会と重なります。

 

 
 
 
 
 
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