Music: Live Friends / B'z (2022)

 

B'zの待望のライヴ映像が発売されました。ロックのイメージが強いB'zですが、こういう顔も持っています。多才すぎる二人です。クラシック〜ジャズ〜AORと、難しいリズムとコードを駆使し、バックにはオーケストラや珍しい楽器も多用しながら深みのある音を奏でています。

個人的には、どうしてもっと早くこの路線にシフトしなかったのかな?という気持ちが隠せません。B'zにとってミニアルバムは、実験場であり、フルアルバムではできないことをやる場所という位置づけらしいですが、この路線をメインにし、ロックはサブにしてもいいのではと思うのですが、どうなんでしょうか。

稲葉浩志氏の歌詞の真骨頂と思えるのが、Friends Iでの歌詞です。女々しく、後ろ向きで、過去を断ち切れなく、すがり続ける。思い出にだけ浸るロマンチスト、でもそんな自分も嫌いじゃない的な人物像が描かれています。これがご本人の体験に基づくものなのか、それとも完全な創作なのか、わかりませんが、恋愛小説を読んでいるような気持ちになります。誤解を恐れずに言うなら、村上春樹ノルウェイの森の世界です。

松本孝弘氏的には、Friends IよりもFriends II、Friends IIIと、音楽性の幅を広げげることができて、作品ごとに成長している実感がある様子です。もはやレジェンドギタリストにしかできないような独自の世界です。

付属Discのインタビューでも語られている通り、ご本人たちは、自分たちのことを天才やセンスのいいタイプではないと自己分析されています。色んな音楽を聴き、勉強し、歌がそういう風に歌えるようにスキルを磨いたり、ギターがそういう感じに弾けるように練習を積み重ねた結果、このアルバムを作り上げることができたし、ライヴという形で表現できるようになったということです。努力型の天才ということですね。

B'zのFriendsも、部分部分にフォーカスを置いてみると過去に誰かがやったことの寄せ集めと思われるかもしれません。でも、イギリスのロックミュージシャンがそうであるように、自分がいいと思ったものを重ね合わせて一つにまとめ上げ、圧倒的なパフォーマンスで表現することで、ひとつのオリジナルとして歴史に刻んできたところがあります。ビートルズローリング・ストーンズもそうだったと思います。どこかに懐かしさがないと、過去へのオマージュがないと、ポップやロックの音楽って流行らないのではと思ったりもします。

Live Friendsの心地よさは、音楽的には過去のポップ/ロックの音楽史へのオマージュであるし、歌詞は昔の知人・友人・大切な人ひいては過去の自分へのオマージュだからかもしれません。無理して、前ばかり向いていると疲れるので、たまには古き良き自分に浸ることもたまにはいいのではと思わせられました。