Paradise Lost / Draconian Times

lalakoora2005-01-09

「異国を旅をする」という言葉には様々な意味があるのではないかと思う.実際にその国・地域に足を運ぶこともあるだろうし,実際に行かなくても写真やVTRを見て異国に思いを馳せることもあるのではないだろうか.また,どの国・地域にも固有の文化が発生しており,それについて知ることもある種の旅になるのではないだろうか.
音楽,特にロック・ミュージックも文化の一つであるとするなら,それぞれの国・地域ごとにその雰囲気は異なっていると思われる.ロック発祥の地と言われるイギリスの音楽とはどういうものだろうか.僕のイギリス音楽の旅は,ビートルズから始まり,ローリング・ストーンズ,クリーム,エリック・クラプトンレッド・ツェッペリン,ディープ・パープル,ブラック・サバス,スティング,レディオヘッドマッシヴ・アタックという道筋を通ってきた.もちろん僕は専門家ではないので,その知見は少ないかもしれない.しかし,自分なりの思い出(見解)を持っている.イギリスの音楽は,特にロックは,他の国の音楽と較べて,”暗い”と感じられる.歌詞については,どうにもならない重荷を常に感じているように読みとれる.階級制度から来る精神的抑圧を皮肉ったブラックユーモアにも感じられる.裏を返せば,シリアスでメッセージ色が強いともとらえることが出来る.また,ロンドンなどの天候はいつも曇っており,霧もよくでると聞くが,メロディや展開の仕方も,どこか憂いを含んでいる.
しかし,僕はこのようなイギリスのロックが好きで仕方がない.スケールは小さいが,憂いを含んだメロディ,そして内省的な歌詞,どのバンドからも”らしさ”を感じるのだ.
前ふりがかなり長くなったが,僕はある一枚のアルバムを紹介したかったのだ.それは,イギリスのロックバンド,Paradise Lostの「Draconian Times」(1995年)だ.パラダイス・ロスト(失楽園)というバンド名からは,ジョン・ミルトンの「失楽園」が連想される.ロックの中にはヘヴィ・メタルというジャンルがあり,さらにヘヴィ・メタルの中にはゴシック・メタルというテンポがゆっくりな退廃的なムードを持ったジャンルがある.
Paradise Lostは,決して有名なバンドではないが,僕の中では,世界一好きなバンドであり,さらにこの「Draconian Times」は,最高の出来であると思っている.まるで映画を観ているように流れに起承転結がある.そしてこのアルバムのジャケットはホリー・ワーバートンというモダン・アートの画家によって手がけられたもので,このアルバムの雰囲気を引き立てている.

失楽園Paradise Lost (1667) は、イギリスの17世紀の詩人、ジョン・ミルトンによる聖書をテーマにした壮大な叙事詩.神に叛逆して一敗地にまみれた堕天使ルシファーの再起と,ルシファーの人間に対する嫉妬、およびルシファーの謀略により楽園追放に至るも,その罪を自覚して甘受し楽園を去る人間の姿を描いている.

Draconian Times

Draconian Times