森有正「生きることと考えること」

早速,森有正の「生きることと考えること」を借りて読んでみました.この本は,フィーリングが合うような気がします.印象的なくだりを引用しましょう.
私のいう感覚とかものとかは,われわれの感覚が感覚において,そこにわれわれがいきるということの全部が,そこにあらわれてくるのです.つまり,あるものというばあいに,その物において,私の生きる全部がそのものの中にあらわれてくる.
それから,「経験と体験」という章の「開かれた世界と閉ざされた世界」がよかったです.
われわれには,一つの経験しかない.その一つの経験が体験的なものに凝固してしまうか,あるいは経験的なものに柔軟に開いていくか.それは,その一つのものを,われわれが,その中でどういうふうに行為するかということによって決まってくると思うのです.ですから経験と体験というのは別のものがあるのではなくて,一つのものが,ある凝固した形をとるときに,それが「体験」で,それがあくまでも新しい可能性に向かって開かれているときに「経験」という名前をわたしはつけるのです.
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生きることと考えること (講談社現代新書)

生きることと考えること (講談社現代新書)