ユング自伝

ユング自伝 1―思い出・夢・思想
ユング自伝 2―思い出・夢・思想
夕方のゼミが終わって,家に帰って夕ご飯を食べてふと手に取ったユング自伝にひきこまれてしまって,12時が過ぎてしまいました.
1巻では,最後の章の「無意識との対決」,2巻は全般的に,強いて言うなら「旅」と「死後の生命」が面白いです.
「無意識との対決」ではフロイトとの決別直後の混沌とした心境が語られています.

無意識との私の意図的な対決を私は最初から自分自身が行っているひとつの実験と見なしており,その結果について私は非常な興味を持っていた.
私の心の中の「地下」において動いている空想を把握するためには,私は,いわば,その中に自分を静めてしまわねばならないことも知っていた.私はそれについて強い抵抗を感じるのみならず,はっきりとした恐れをも感じていた.
ユング自伝1「無意識との対決」より

「旅」では,キリストと仏陀は同様に自己の具現者であるが,意味が異なっていると解釈されており,非常に興味深い考察だと思いました.
「死後の生命」では,晩年のユングらしく確信に満ちています.

無限への感情は,われわれが極限のものと結ばれているときにのみ達成することができる.人間にとって最大の極限は「自己」であり,それは「私はただ・・・のみである」という経験によって顕にされる.自己の中の狭くわれわれがとじこもるという意識だけが,無意識の無限性との結びつきを形成する.このような認知において,われわれは自分自身を限定されたものとして,そして同時に永遠なものとして,経験する.われわれが自分自身の独自性-すなわち,究極的には限定されていること-を知ることにおいて,われわれはまた無限性を意識しうる力をもつことになる,しかし,それはそのときにのみ可能である!
ユング自伝2「死後の生命」より

しかし,ユングのこの”閉じた感じ”は,ベルクソンのそれとどこか近くないでしょうか.