坊っちゃん / 夏目漱石

坊っちゃん (岩波文庫)
茂木さんの影響で昔読んだことがある夏目漱石の「坊っちゃん」を最初から最後まで読み返して見ました.僕は,今まで完全に主人公「坊っちゃん」を中心にあの世界を見てきました.しかし,この歳になって読んでみると,自分自身の中に,あの策略的な「赤シャツ」の要素があることを感じたり,はたまたあの「うらなり」君の消極さを感じたりもしました.小中学生に読んだときよりも,坊っちゃん以外の登場人物の目から作品を見てしまうようになりました.それは,執筆時の夏目漱石が「赤シャツ」に映し出されているという説を知ったからかもしれません.
ただ変らない部分があります.それは,最後の最後の下りの「清」という坊っちゃんを溺愛していた老女が亡くなってしまったひと段落を読んだときは,今になっても切ないというか,最後に,急に熱が冷めていき,現実にひき戻される気持ちになります.あの最後の下りによって,僕は,坊っちゃんが敗北し,そして松山では引き続き赤シャツが采配をふることを強く感じさせられます.