孤軍 / 秋吉敏子&ルー・タバキン・ビッグ・バンド

孤軍
日本人で初となる“ジャズマスターズ賞(2006年)”を受賞したジャズ・ピアニスト,秋吉敏子さんが夫のルー・タバキンとオーケストラを結成しデビューした作品「孤軍」(1974年)です.この「孤軍」というアルバムは,ルバング島の密林から奇跡的に生還した小野田寛郎をテーマにコンポーズされました.また,このタイトルは,単身渡米し,差別と逆境に耐えて自尊心を失うことなく健気に生きてきた秋吉さんの投影でもあると言われます.
秋吉さんのプレイスタイルは,バド・パウエルからの影響が強く感じられます.しかし,単に輸入しただけのジャズアルバムではありません.楽曲の所々に「大和魂」という文字が浮かんできそうな”しぶ〜い”トランペットのソロがあったり,日本の伝統的な音を「鼓」で表現されていたりと,ジャパニーズ・テイストがそこはかとなく聴こえてきます.日本の伝統音楽とジャズが絶妙に融合しています.武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」に並ぶ芸術作品だとも言われるように,作編曲家としてのセンスが高く評価されています.
以後40年間にわたりジャズの本場アメリカを拠点に活動し,数々の賞を獲得するなど,70年代のジャズ史に残る偉業を残しています.