ブラームスはお好き / フランソワーズ・サガン

ブラームスはお好き (新潮文庫)

ブラームスはお好きですか?きのうは失礼しました』ポールはほほえんだ。彼女は二行目の『ブラームスはお好きですか?』にほほえんだのである。それは、彼女が十七ぐらいの時、男の子たちが彼女にきいたのとおなじ種類の質問だった。もしかしたら、その後も人々はこのような質問をしているのかもしれなかった。だが返事をきこうともせずに。だが、こういう生活の中で、人生のこんな年になって、だれが返事などきいていよう?それに、彼女はブラームスを好きだろうか?