これからの「正義」の話をしよう / マイケル・サンデル(2010)

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学


発売当初に購入してから、ちょくちょく読んでいたのですが、最近どういうわけか集中して読むようになっています。個人的には、アリストテレスを起源とするコミュニタリアンの考え方に興味を持っています。日常の出来事に対して、我々はどう考え、どんな答えを出すべきなのでしょうか。


例えば、「オバマ大統領は、日本人に対して原爆投下を謝罪すべきか」あるいは、「現代の日本人は、韓国人や中国人に対して前の世代が犯した過ちに対して、公に謝罪する道徳的責任があるのか」という戦争責任に関する命題やそれをめぐる議論に関しては、各人はどう考えるべきでしょうか。


あるいは、「日本以外の国のある地域で大洪水があり、大変悲惨な状況になっているとします。同様に、国内のある地域で災害が起こった場合、どちらの被災者を救うべきでしょうか。」


「ある人の収入が多いのは、単純に個人の努力のみによるものでしょうか」、あるいは「逆に、収入が少ない人は、ただその人の能力が劣っていたり、努力が少ないからという理由だけなのでしょうか」、「政府が、年収の多い人から所得税を多く徴収することは、公正な行為といえるでしょうか」


といったように身の回りでまさに起こっている問題を深く考える上で、本書は様々な物事の考え方があることを提示しています。「こうすべきだ」と答えが書いてあるわけではないのですが、考えたり、議論したりすること自体をあきらめてはいけないというのが、サンデル教授のメッセージでしょうか。