サッチャリズム

日経新聞の「やさしい経済学」では,現在,佐和隆光著「市場経済第三の道」が連載されている.自分の頭の中を整理するためにもここにその概要を記したい.
この記事は「完全な市場主義社会」への痛烈な批判である.サッチャーレーガンが信奉していた考え方だ.しかし歴史を振り返れば判ることだが,結果として英米両国で起きたのは,富の増分の大部分が富裕層に分配され,最貧層には,ほとんどトリックダウン(したたり落ちなかった)しなかった.「所得格差は勤労意欲の源泉」ではなかったのだ.むしろ,市場の力は暴力化し,様々な問題を生じさせた.その一つとして,公的な医療・教育の荒廃がある.サッチャリズムは,人頭税という,世帯などの人数に応じた地方税を導入し,教育,福祉,公共施設など個人の生活の便益を受ける者に等しく課税すべきであると主張したのだ.これは言い換えれば,経済的に恵まれている人ほど,良い医療,良い教育を受けられることになる.しかし,親の貧富が子供の教育を差別化するのは,機会不平等の典型例である.現在の日本の小泉政権ではどうだろうか.サッチャリズムの再来とならないだろうか.「一人勝ち」といわれる企業による独占を予防し,自由で競争的な市場経済を守らなければならない.