生態学会2日目

今日は午前中は生態学会のアルバイトをした.一般講演会場でのタイムキーパーをした.運良く聴きたかった講演の会場に当たった.
矢野修一さんらの「カブリダニはSOS信号とは異なる手掛かりでハダニを探す」という講演が面白かった.僕は,学部時代に高林純示・田中利治共著の「寄生バチの三角関係」という一般向けの本を読んだことがある.その本では,植物はハダニに加害されると,被害を軽減させるためにハダニの天敵である寄生バチを呼ぶ特殊な「香り」,すなわちSOS信号を出していると書かれていた.生物学では「三者系」と呼ばれる分野だが,この発見を皮切りに,現在この生物間相互作用の研究プロジェクトとして多くの研究者と費用が関わっている.
しかし,最近になって,矢野さんらがこの三者系に対する批判を学会などで繰り返している.矢野さんは,寄生バチは加害された植物の葉から出る「香り」ではなく,ハダニが出す「糸」をたどってハダニが付着している葉にたどり着いているという見解を示している.
科学というのは,宗教ではない.真実は誰にもわからない.どんな見解でも仮説なのだ.仮説がどれだけ真実に近いかは,検証を繰り返したり,また対立仮説を立てたり,他の批判から防御できるかにかかっている.

昼からはフリーだったので,公募シンポジウム「量的形質の軍拡競走:理論と実証」を聴きに行った.これも非常に面白かった.軍拡競走とは,食うものと食われるものの間でお互いがいたちごっこのように対抗戦略をとり,ある特定の形質が一方方向へ進化していくことで,例えば,寄生バチの毒性と寄主の防御性などがある.今回のシンポジウムでは,野外調査,室内実験,数学理論の3つが,うまく回転して,一つの系を明らかにしていくことが大切だなと感じた.