なぜ環境を守らなければならないのか?

僕は環境問題,自然保護を勉強するに当たって参照した本がある.それは,佐倉統さんの「進化論の挑戦」や「現代思想としての環境問題」だ.
特に,前者の本の中に,「なぜ環境を守らなければならないのか?」という疑問に対する指針が示されている.
その内容を簡単にまとめると,


なぜ多くの熱帯林が保護され,多くの種が生きられるようにしなければならないのか?これについて説得的な回答を見出すことは,結構難しい.
経済的価値:未知の資源が熱帯雨林には眠っているかもしれない.
学術的価値:ガンやエイズの特効薬になるような成分を持った物質があるかもしれない.
審美的価値:森は美しい.鳥も美しい.
生態学的価値
これらの観点からの自然保護政策は強力なものになりうると思われるが,いかんせんこれはトキやサルの絶滅がいけない理由にはならない.
この問題に進化的に迫ろうというのが,ウィルソン,E.O.の「バイオフィリア仮説」である.「自然を愛する心性は人間に遺伝的に組み込まれたものである」というのが基本的な命題で,簡単に言うと,自然を好むのは,人類進化の過程で生じた適応的な形質であり,人間は自分たちに適して環境を快いと感じるようにできている.例えば,自然に対する人間の好みも,サヴァンナへの適応現象として説明できるのではないか.自然保護とか愛護などは,人間に遺伝的にプログラムされた形質ではないか.
と言及されている.
僕は,佐倉統さんの文体というか,考え方には強く惹かれるものがあり,そういった人が記した文章というのは,強烈に頭に残ってしまう.
この本を記した当時佐倉さんは,利己的な遺伝子の著者ドーキンスの信奉者であったと聞く.だから,生物の現象は何でも”遺伝子”,またそこから派生する”ミーム説”で説明がつくのではないかという還元主義的な考え方をされていたのかもしれない.
進化論の挑戦 (角川ソフィア文庫)

進化論の挑戦 (角川ソフィア文庫)