オートポイエーシス

僕の友達で,オートポイエーシスについて研究している人がいて,この考え方は面白い.
オートポイエーシスとは,境界を自ら作り出すことにより、その都度自己を制作するという考えのことで,従来の有機体の捉え方とは,まったく視点が異なっていて,システムそのものから考察を行っている.
免疫反応は,「自己」ではない,病原体,異種動物,化学物質などあらゆる「非自己」に対して起こるのだが,この場合,「自己」と「非自己」の区別をつけているのは,何か?と疑問に思ったことがある.この理論では,免疫システムは,システムが(自己と非自己の)境界を変えていくのではなく,環境との相互作用により境界が定まることでシステムそのものが成立し,システムの「自己」が規定されていく(自己組織システム)と考えられる.
自己組織システムには,昆虫の変態なども当てはまると言われる.
また,動的平衡システムなどは,生態学ガイア仮説(超有機体説)と同じようなことを言っている気がする.
それから,アフォーダンスという概念も面白い.知覚する側の主観の中に情報があるのではなく.環境の中に情報が実在する(エコロジカル・リアリズム)というもので,主体と客体の間に現れるとされる.
このオートポイエーシスアフォーダンスは,ハイデガーの「世界-内-存在」の概念や,ユクスキュスルの「環世界」の概念を元に考え出されたのではないかと直感的に思ってしまうのは,僕だけだろうか.
哲学は,経験可能な表象から,理論が導かれることは少ないので,「眉唾だ」と,切り捨てられることが多い.しかし,後々「科学」によって再現可能になった時,始めて,「そういう意味だったのか」と再評価されたりする.
「哲学」と「科学」どっちが大切かといったことは問題ではなくて,「この人は何を言いたかったのか?」と深く深く洞察していくことが大切だと思う.