免疫学者の多田富雄さんの「生命の意味論」の第9章,第10章を集中的に読んでみた.第10章の「超(スーパー)システムとしての人間」という章の中で印象的なくだりがあったので,そっくりそのまま引用しておきたい.
・・・,「心」といっていた実体のないものが,明らかに実体として存在する脳神経細胞によって作られた回路網の活動を通して作り出されるものであって,「自己意識」も「愛」も決して例外ではないことである.その点で哲学は,ようやく「精神」と「身体」という二元論から,「精神の身体化」という明確な一元論に回帰しつつあると私は思う.養老孟司氏は,現代文明の「脳化」ということをいわれるが,私はむしろ脳という特殊な臓器を超えて,人間の心の「身体化」ということがまぎれもなく起こっていると思うのである.
- 作者: 多田富雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/02/01
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