村上春樹の描く女性像

lalakoora2006-07-12

2004年9月30日 茂木健一郎 「脳から見た美とはなにか 」http://www.qualia-manifesto.com/kenmogi.html


茂木さんの講演の中で村上春樹批判がたまに出てきます.村上春樹の小説を読んだことのある,一時期は興味を持っていた僕としては非常に興味が沸きます.
茂木さんによれば,村上春樹の描く女は観念にすぎないと言われています.まるでプラスチック製のサンドイッチを食べているような描写で,彼が一貫して描いているのは,「観念の世界のリアリティ」なのではないだろうか,ロマンティックな小説の裏には人間の魂の危機がある.出会い系も秋葉原オタク文化も同じではないかと述べられています.
僕は最近,ある知人に「好きな作家は誰!?」と聞かれた時に,「昔は村上春樹を読んでいたけど,今はまったく共感しなくなってしまった」と答えたことがあります.そしたら,その話を聞いていた別の知人が,太宰治の本を電車の中で読むのって,気恥ずかしいけれど,村上春樹くらいだと別に恥ずかしくないよね!?と言ってきました.
僕は,太宰も春樹もどちらも読んできましたが,村上春樹を読んでいる自分を見られることも非常に気恥ずかしいと感じると言いました.しかし,どういうわけか,その人にはわかってもらえませんでした.その人が春樹を読んだことがないというのもあるのかもしれません.
僕の意見としては村上春樹の小説に対しては,思春期という言葉がぴったりきます.少年から青年にかけてのなんとも言えない内面で起こる異性への感情(欲求),イマジネーション,そして実物の異性と自分の観念の中の異性像,また自分の容姿についての批判と愛情.こういったことは多くの人が経験するんじゃないかなぁと思います.しかし,イメージとリアリティが一致しない場合,イマジネーションが先行してしまった場合に,村上春樹と出会ってしまったら,「はまる」じゃないと思います.僕は今振り返るとそう感じます.
だから僕は春樹を読んでいることは,恥ずかしいと感じるんです.まるで成人男性が自分は童貞だとカミングアウトしているように見えてしまうんです.
ただ,村上春樹はこれだけじゃないので,彼の小説が抱えている「地獄」,そして「現代社会の魂の危機」と茂木さんが呼んでいるものについては色々と考えてみたいです.