マルコムX自伝

★なぜマルコム・リトルという人間は,「マルコムX」になったのか,彼にとってイスラム教への改宗の意味とはどのようなものだったのか,この自伝を読むと少しずつ見えてきます.
バプテストの攻撃的な牧師だった彼の父親アールは,マルコムが6歳の時に何者かによって惨殺されましたが,特別な捜査はなされませんでした.一方,母は黒人と白人の混血で,マルコムの祖母が白人に強姦されて生まれたと言われています.
マルコムは,10 代,20代の時は悪行を重ね,逮捕され,6年間刑務所生活を送ります.その中で,イライジャ・ムハンマドと彼の行っていたブラック・ムスリム運動に出会い,その教えを勤勉に研究したそうです.マルコムは,後にあるジャーナリストに学歴を聞かれた時に,「自分の大学は獄中で読んだ本だ」と答えるほどでした.そして,西洋哲学の大きな矛盾に気づく.マルコムが宗教を信じるようになる一つの系譜,強烈なルサンチマンを知ることができます.
本書は,タイム誌によって20世紀の10冊の最も重要なノンフィクションの中の1つに選ばれました.1993年に映画『マルコムX』(監督:スパイク・リー、主演:デンゼル・ワシントン)公開に合わせて,全訳版である本書が河出書房新社より『マルコムX自伝』として刊行されました.