マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

マーラー:交響曲第7番
★曲目
1. 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 第1楽章
2. 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 第2楽章
3. 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 第3楽章
4. 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 第4楽章
5. 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 第5楽章
バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック
★1985年録音


ロシア文学者、亀山郁夫さんは、ドストエフスキーの『未成年』について、”この流動性と熟成の感覚は、グスタフ・マーラー交響曲にたとえるなら、第7番にどこか通じている”と言及しています(ドストエフスキー -謎とちから 文春新書 2007年)。
交響曲第7番ホ短調は、グスタフ・マーラーが1905年に完成した7番目の交響曲であり、5楽章から成っています。「夜の歌」(Lied der Nacht)という副題が知られており、マーラーが第2楽章と第4楽章に「夜曲」(Nachtmusik)と名付けていることに由来しています。
自分も聴いてみた感想としては、第2楽章と第4楽章、すなわち「夜曲」と名づけられた楽章が結構好きだと感じました。特に第4楽章がいいですね。
マーラー交響曲を第1番から第9番まで通して聴いてみたところ、どの交響曲にも、アダージョ(ゆるやかに)、もしくはそれよりも静かな場面があることを感じました。第9番の第4楽章では、ほとんど音が聴こえなくなる部分もあります。
調べてみると、マーラー交響曲の中には『ersterbend(死に絶えるように)』と書き込まれたパートがあるそうです。その『ersterbend』と書かれているパートは、

1. 交響曲第2番、第4楽章「原光」の中間部、オーケストラの間奏部分。
2. 交響曲第4番第3楽章の最後に、Gänzlich ersterbend(完全に死に絶えるように)と書かれている。同時に、イタリア語のmorendo(こちらは「だんだん遅く、弱く」という音楽上の発想記号として使われる)も書き込まれている。
3. 交響曲第7番第4楽章の最後。morendoも書かれている。このクラリネットの音型は、第9番第4楽章最後の音型と同様のもの。
4. 交響曲第9番第4楽章の最後の小節
5. 『大地の歌』第6楽章「告別」の最後に、Gänzlich ersterbendと書かれている。
wikipedia参照)

であるようです。
比較的人気のない第7番なんですが、マーラーが生涯追求し続けたと言われる『死』のテーマにかかわるとも見て取れる『ersterbend』が書かれているという点でも、実は重要な存在なのかもしれません。ドストエフスキーの『未成年』のように。


確か、僕がこれがマーラー交響曲だと意識して初めて聴いたのは、「交響曲第5番第4楽章アダージェット」だと思います。そう、かの有名なルキノ・ヴィスコンティ監督による映画『ベニスに死す』(トーマス・マン原作)のモチーフにもなっている曲です。しかし、1回目観たときには、まだ自分には早すぎたかなという感想を持ちました。ヴィスコンティの映画では『地獄に堕ちた勇者ども』に非常に感動を覚えました。あれはドストエフスキーの『悪霊』ですね。もしかすれば、グスタフ・マーラーがわかれば、『ベニスに死す』の映画のよさもわかるのかもしれません。