宗教なき時代を生きるために / 森岡正博(1996年)

宗教なき時代を生きるために


「科学」に片思いしてふられ、「宗教」にも片思いしてふられたという本書著者。私が存在することの意味や、ほんとうの自分とは何かについて、現代の科学は答えてくれないし、宗教のほうは断定的にしか語ってくれないと失望したことが書かれています。


ここで、すごいのは新たな試みを始めることを決意したことです。
そういうことに答えを出せるのは結局は自分しかいない。どこまでも自分の目と頭で追求していくしかないのだと。
著者は次の4つのスタンスに立ちながら、他者とのコミュニケーションを通じて、自分ひとりの責任において行い、自分自身の生死に決着をつけることを考えています。このような知性に裏付けられた生のあり方を「生命学」と読んでいます。

1.絶対の真理は(この私も含めて)誰によっても語られなかったし、これからも語られることはないであろうという感覚に忠実になる。あるのは解答を模索していく道のりだけだ。いくら答えがでなくても、何度でも繰り返し問い続けていく。その問いの軌跡が大事なのだ。
2.死後の世界の存在について、断定的に語らない。それはあるのかもしれないし、ないのかもしれない。同様に、絶対者や超越者や神の存在についても断定的に語らない。それはいるのかもしれないし、いないのかもしれない。分からないことについては分からないと、はっきり言う。
3.世界と宇宙の成り立ち全体にかかわる根本的なことがらにかんして、「×××こそが正しいのだ」という断定的な態度をとらない。その命題の正しさを自分のいのちを賭けて全身全霊で疑うことを積極的に停止するという態度をとらない。
4.それらの根本的なことがらに対して、他人のことばや思考にみずからを重ねない。自分の答えは、あくまで自分のことばと思考で見出していく。

最後に、自分ペースで走ることの大切さが書かれています。確かに人間なんて、そんなに簡単に変わったりしないものなのかもしれません。何度もトライしているうちに、ふっと変わったりするのかもしれません。逆に、「変わらない自分」というものもしっかり見つめていかなければなりません。