エアロゾルと地球環境

梅田で勉強会がありました。仕事終わってから、すぐに出かけました。


エアロゾルと地球環境」というテーマでした。気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子をエアロゾル(エーロゾル)といいます。サイズはおよそ0.001μmから10μm程度。このエアロゾルが、地球環境の変動や物質循環(オゾン濃度、酸性雨、温暖化、大気汚染、多くの生態系)に大きく関わっていることについて解説してくれました。


今回の発表では、地球環境素過程には二面性があるということが重要な主張だったでしょうか。


環境問題のひとつとして挙げられる酸性雨についてですが、その発生の過程を見てみると、紫外光は大気中のオゾンから原子状酸素を切り出し、水蒸気と反応させて、OHラジカル(水酸ラジカル)や、過酸化水素を生じさせます。これらは、大気中のNOxやSOxを酸化して、硝酸や硫酸を生み出します。さらにこれらとその塩類が、大気中の水分に溶けて降ってくることで、酸性雨となります。OHラジカルや過酸化水素は迷惑者として扱われています。


しかし、地球環境保全の上で、特にOHラジカルは極めて重要な役割を果たしているという報告があります。大気中の温室効果ガスであるメタンなど汚染物質の多くがOHラジカルによって分解・除去されているというのです。


水中に射し込む紫外光も両面の働きをしています。植物プランクトンのタンパクや脂質の生産を阻害する反面、その分子切断能力や酸化性化学種の生成能力により、湖沼や沿岸海洋の汚染を抑えているとも言われます。


こういった光化学的物質除去などの自然の浄化作用についても、環境保全を考えていく上では見逃してはならない科学的知識であると感じました。


栄養供給源としてのエアロゾルの役割も見逃せません。海洋生態系へ栄養塩として供給され、海洋や陸の生態系と物質循環に果たす役割が大きいようです。例えば、東シナ海への栄養塩の供給源として、長江、黄河などの河川からの流入が大きいと考えられてきましたが、大気からの供給もその半分近い物質量があるという報告があります。


黄砂中のリンがハワイの諸島の雨林を維持に一役を買ってきた可能性も示唆されています(→論文


話はそれますが、よくよく考えてみると、今最も問題になっている散布農薬の粒子が飛散すること(ドリフト)も、このエアロゾルの浮遊現象と同じ理屈であるはずです。また、エアゾールと呼ばれているスプレー式の殺虫剤も、この原理を利用したものです。


最近たまに行われる人工雨(クラウドシューティング)は、核となる粒子として、ドライアイスヨウ化銀が使われているようです。


微小粒子が水中、あるいは大気中に分散していることは、眼には見えないので、あまり気にされないかもしれませんが、実は重要な役割を果たしているんですね。科学の目を持ち、偏見を少なくするというのは、現代人にとっては重要なスタンスだと思います。かなり大げさに言えば、科学もひとつの信仰でしょう。