没後30年 神谷美恵子がのこしたもの

思文閣美術館にて、「神谷美恵子が残したもの」が開催中だと知りました。期間:2009年10月3日(土)〜12月20日(日)


大学院の講義で名前を聴き、略歴くらいは知っているのですが、まだちゃんと著作物を読んだことはありません。


『人間をみつめて』(朝日選書)には、こんな素晴らしい文章が書かれているそうです。

「生命への畏敬ということをシュヴァイツァは言ったが、私は宇宙への畏敬の念に、このごろ、ひとしおみたされている。科学の武器をもってさえ、その全貌を把握できないこの宇宙の中で、私たちは“意識”ある生命を与えられた。この意識をもって宇宙を支えるものに賛歌をささげたい。それをささげうる心が人間に与えられたことを感謝したい。こういう広大な世界を、小さな心で思い浮べることこそ人間に与えられたおどろくべき特権であると思う。」

これを読み、最近の自分を振り返ると、打算的に行動していることを感じざるをえません。この自分はもともと合理性を求めて生きているように見られがちですが、本当は、徳に生きたいという気持ちを捨てることはできません。よくも悪くも功利主義的に考えたほうが、うまくいく気はしているのですが、それではなんだか、この「私」という、実存の問題には答えられないという直感があります。宗教家のもつ神秘性とは、「私」という問題への処方箋なのかもしれませんね。そういう意味で、宗教や聖人には興味があります。


なんだか尾崎豊の「町の風景」の歌詞が思い浮かんできました。

人間喜劇さ その通りだろうよ
だけど何がこうさせるのか わからないよ
愛憎の渦だよ 窮屈になるだけ
だけど誰が止めるというの 祈るしかない生き物よ

「祈るしかない生き物よ」 ここでぐっときてしまいます。