鉄が地球温暖化を防ぐ / 畠山重篤(2008年)

鉄が地球温暖化を防ぐ


★目からウロコでした。沿海において、鉄イオンの溶解量が不足すると、どんなに栄養素があっても、植物プランクトンや海藻は育たないばかりか、動物プランクトンも小魚も大きな魚も、カキやホタテ、アワビなどの貝類も、ウニも、どれも十分に育たない環境になってしまいます。土壌や岩石の中には、酸化鉄が含まれていますが、そのままでは水に溶解しないので、腐植土中の細菌やバクテリアなどの助けを借りてはじめてイオンとして海水中に存在できます。
海藻や貝類は、鉄分を好んで摂取する傾向があるので、鉄イオンが豊富な河口や沿岸部では、魚類、貝類、海草類がバランスよく生息している事例があります。面白い現象として挙げられているのが、関西空港の護岸部および周囲の海が、よい漁場となっていることです。それは、土台として鉄鋼スラグが使用されているからです。イメージでは「環境破壊」が懸念されるような建設計画も、意外な結果をもたらすこともあるということですね。
身の回りの環境を100年前の状態に戻すということは難しいとしても、よりよい環境とはなにかということを明確にした上で、それに向けて工夫していくということは可能だと思いました。そのためには、科学的な知識や様々な事例を知ることが必要と思われます。