停電の夜に / ジュンパ・ラヒリ(2000年)

停電の夜に (新潮文庫)


アメリカ在住のインド人女性作家。本書は短編集で、ピューリッツァー賞文学部門受賞作品。多くの短編の中でテーマとして取り上げられているのが「結婚」です。それは、もしかすれば男女の出会いや生活というのは、異文化の接触であるからかもしれません。作家、ラヒリも、両親はベンガル人で、生まれはロンドン、育ちはアメリカと様々な文化との接触を経験したきたことが影響しているのかもしれません。インドの中でもベンガル地方は、南アジア北東部の地域のガンジス川ブラマプトラ川下流にあるデルタ一帯を指しますが、この地域は、宗教、民族、政治、文化的に複雑な歴史を持っています。彼女の描き方の特徴は、客観的で写実的です。登場人物たちの距離感が遠いようにも感じられ、人の仕草や言葉の使い方をしっかりとらえないと、他人事として物語が進んでしまいます。視点が女性的なんでしょうか。あまりこういう描き方の小説は読んでなかったせいか、馴染むのに少し時間がかかりました。