結局

保全生物学って何かと考えすぎて,どんどん複雑になってしまう自分に気づいた.もっとシンプルに考えようと思う.
そのまま考えるなら,生物を保全する学問だ.人以外の生物はおそらく人間のような思想などは持っておらず,自らが棲む環境がどんどん破壊されて適した生息地が激減していたとしても,それを守ってくれる人に能動的に伝えることはできない.だからこそ,人の中の専門家,あるいは科学者という立場の人間が,調査したり実験したりして,その現状を把握することが必要となってくる.だから保全生物学に携わる立場の研究者は,環境と生物と人間の間に立つ仲介者のような存在ではないだろうか.
よって,保全生物学とは,環境と生物と人間の関係をより適切に調査し,より的確に人間社会に提示する学問ではないだろうかと思った.それには,日頃からまめに自然の声というものを聴いていなければならないし,貪欲に情報もキャッチしなければならない.そのためには生態学の知識が必要であるし,自分が対象とした生物に対する愛情(使命感・責任感)も必要であるし,人間社会に伝える際には,信条(哲学)を持っていた方が望ましいと思われる.
調査,実験方法に関しても,すでに出来上がっているものではないので,より良いものへと発展させていくためにも,専門家同士の交流(学会,論文発表,科学者コミュニティの形成など)は必要と思われる.
自分に関しても生物的防除資材として寄生バチを研究しているなら,生物的防除自体は環境に対して「善」であると考えられるので,自分の対象のハチを徹底して調べて,将来的には実用化されるレベルまで研究が進めばよいと思っている.社会や経済の状況に利用度が左右されるかもしれないが,それは自分の力で変えられるものではない.その辺は,社会学者,経済学者の仕事ではないだろうか.
そしたら,昨日の日記で書いたディープエコロジーはどうなるのか.確かにこれは,環境保護運動の一つのスタンスなので,一般市民はどう考えるべきかの一つの指針である.でも,学者にはまったく関係ないのかと考えると,そんなことはないだろう.