キング・アーサー (2004年)

キング・アーサー [DVD]
★監督:アントワーン・フークア
★製作総指揮:チャド・オーウェン、マイク・ステンソン、ネッド・ダウド
★製作:ジェリー・ブラッカイマー
★脚本:デヴィッド・フランゾーニ
★出演者:クライヴ・オーウェンキーラ・ナイトレイヨアン・グリフィズ
★音楽:ハンス・ジマー
★紹介・感想:本作は、アーサー王伝説が、実は、ローマ帝国によってブリテン島に派遣されたサルマタイ(サルマート)人の伝説が起源であるという新しい仮説をもとに作られた映画です。
この映画で描かれているアーサー王は、5世紀にアングロ・サクソン人との戦いに勝利したローマ・ブリトン人の指導者アンブロシウス・アウレリアヌス(Ambrosius Aurelianus)です。しかし、映画での彼の名前は、アルトリウス・カストゥス(Artorius Castus)で、アーサー(Arthur)という呼称は、2世紀にローマのマルクス・アウレリウス帝の傭兵であったサルマタイ人の初代部隊長はアルトリウス(Lucius Artorius Castus)に由来していると考えられ、映画では、初代アルトリウスとブリトン人の母との間の子供を主人公として設定されています(しかし、初代アルトリウスの存在した2世紀と、本作品の主人公が生きている5世紀の時間的な隔たりは、不可解です)。また、アーサーの戦友たち「円卓の騎士」の存在もこの物語の展開には欠かせません。特に、アーサーの親友であるランスロット(映画の一番初めに出てくる)は、理想を追い求めるアーサーの性格とは、正反対で非常に現実的でペシミシトです。
したがって、舞台は古代末期(5世紀)で、衰退しつつあるローマ帝国と予言者マーリン率いるウォーズ(Woads)と呼ばれるブリテン島先住民のケルトブリトン人やピクト人、さらにブリテン島に新たな侵略者として登場したサクソン人の間の確執と戦いを、領土の境目であるローマ軍によって築かれたハドリアヌスの城壁を中心に描いています。
結局、アーサーは、北部に配属されていたローマ帝国の暴君マリウスの奴隷になっていた村人や拷問にされていたウォーズの女性を救うことにより、マーリン率いるウォーズなど先住民たちを見方につけることになります。そして、アーサーは、ローマ帝国のためではなく、自らの自由を掲げて、サクソン軍に立ち向かいます。それは、アーサーが、人間の自由意志を信じ、性善説を唱え(つまり原罪を否定し)、ローマ教会が教徒の救済権を独占する考え方に反対したペラギウス派(Pelagianism)の信徒だったからでしょうか。
このように、新しい仮説に基づいた映画は、アーサー王伝説が、現在のイングランドの基礎を築いたアングロ・サクソン系に抵抗した伝記であるにも拘わらず、英雄としてイギリス人の間で長い年月をかけて語り継がれてきたのは、アーサー王とは、ブリトンケルト)人の先住民の血をひく者で、さらには、ローマの宗教から先住民の精神的独立(ペラギウス主義やケルトの自然崇拝など)を守り抜いた英雄であり、後に起こるイギリスでの宗教改革アイルランドの独立に影響した可能性もあるという、今まで考えられてきたブリテン島(イギリス)の民族や宗教の歴史に対して一石を投じるストーリーなのです。
http://www.movies.co.jp/kingarthur/


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