NHKのETV特集で「21世紀のドストエフスキー〜テロの時代を読み解く〜」というのが放送されていました(見たのは再放送ですが)。亀山郁夫さんがカラマーゾフの兄弟を話題の中心に、作家の金原ひとみさん、加賀乙彦さん、ドキュメンタリー作家の森達也さんと対談するという形式でした。
ドストエフスキーの小説のようないわゆる「古典」が最近の日本でちょっとしたブームになっている要因として、9.11事件以来、世界が多極化しているという認識が広まったことや、最近の中国の台頭によって、自分たちのアイデンティティが揺らぎ、曖昧になっていることを挙げている人もいます。
このETVの放送では、ドストエフスキーの作品に出てくる人物の「多声性」について注目されていました。善か悪かといった単純な二元論ではなく、一人の人間が複合感情(コンプレックス)を抱えていることを描き出していると。
自分も、ドストエフスキーの作品に、いや読んだ時に沸き起こった「感情」にこだわっている読者の一人なので興味深く感じられました。いろいろ魅力は感じていますが、登場人物の「曖昧さ」に気持ちが救われます。世の中そんなに単純ではなく、見方によって全然違う様相を示し、各人は、自分と他者の間に生じる「多面性」にひどく自覚的に生きているように解釈できます。
”どんなモノも他のモノとの関係において成立しており、「多声性」が生じえる”というのが、自分がドストエフスキーの作品から得たテーゼのひとつです。
ETV特集のHP
http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html