苔の話 / 秋山弘之 (2004年)

苔の話―小さな植物の知られざる生態 (中公新書)


★目次
第1章 コケ学事始め
第2章 おそるべき環境適応能力
第3章 苔はこんなに役に立つ
第4章 苔に親しむ


★京都の寺社を訪れるようになって、不思議と蘚苔類に趣深さを感じるようになりました。寺社の境内や山道の脇に絨毯のようにコケが生い茂った様子は、その場の懐の深さを感じさせます。


といっても、コケは人工物ではなく、独自の生態を持った生物です。体サイズが小さく、繁殖能力も高く、極寒から熱帯雨林までと分布範囲が広いところは、動物界での昆虫類を思わせます。コケ類の特徴として、根がなく(仮根はある)、茎と葉だけの体制で、維管束も有さず、胞子で繁殖し、子房(果実)はありません。ふだん、われわれがコケと呼んでいるものは、精子と卵をつくる世代(配偶体)です。ちなみにシダ植物あるいは裸子植物種子植物では、胞子を作る世代(胞子体)をいつも目にしています。


コケ植物は、蘚類、苔類、ツノゴケ類の3つにわけることができます。さらに、蘚類には4つのグループ(ミズゴケ亜綱、クロゴケ亜綱、ナンジャモン亜綱、マゴケ亜綱)、苔類には2つのグループ(ウロコゴケ亜綱、ゼニゴケ亜綱)、ツノゴケ綱(ツノゴケ亜綱)があります。大まかなグループ分けには胞子体、特に螬葉の形状が重視されています。もちろん配偶体のつくりもかなり異なっています。


まだ自分は何類かもわからないレベルですが、これから散策の時の楽しみにしようと思います。もう1ヶ月もすれば梅雨に入り、鬱陶しい時期の到来と言えばそうなんですが、梅雨時は苔が最も繁殖する見頃だと思えば、なんとなく気も晴れてきます。


巻末には、蘚苔類が鑑賞できる庭としては、京都では西芳寺銀閣寺(南禅寺法然院銀閣寺→詩仙堂曼殊院は黄金コース)、三千院が紹介されています。