邂逅 / 多田富雄・鶴見和子(2003年)

邂逅

「他者」と「自己」の緊張関係が免疫スーパーシステムを成立させるとすれば、異種は単なる排除の対象ではない。スーパーシステムのワールドでは異種は同種と同様に、いやもっと重要な構成要素になっているといえると思います。
免疫スーパーシステムという世界では、異種、同種が互いに反応しつつ、免疫のレパートリーの拡大、抗体の多様性の維持、反応様式の多様化に役立ってきたと考えるのが妥当です。
地球環境自体も、大きな意味でスーパーシステムのひとつであると、私は『生命の意味論』で主張しました。それは多様な生物が、共生しながら、長い時間をかけて作り上げたものです。その構成要素は生物の種ですが、それぞれの種のルールだけでは環境は成り立たない。階層をひとつ越えた、環境のルールという新しい原理に従わなければ生きられない。エコロジーという思想です。
そこでの緊張関係が共生です。共生の掟は守られなければならない。それが守られなければ、共生ではなく共死に陥る。そういう認識が、ようやくできようとしているところです。