Study: Genes Hint at the Origins of Watermelons. New York Times Intl. Weekly. July 18, 2021

タイトルは、「スイカの起源に遺伝的ヒント」

・4,300年前の古代エジプトでは、すでに現在一般に食べられているスイカ(現代の栽培種)と見た目の変わらないスイカが食べられていたことを示唆する壁画が発見されている。

・科学者らは、スイカの祖先はアフリカ発祥であると考えているが、ナイル渓谷付近ではスイカの祖先種(原種)はまだ発見されていない。

・西アフリカのエグシ・メロン(Egusi melon)が現代スイカの祖先種の子孫であるという仮説がある。ところが、最近発表された科学論文によれば、アフリカ・スーダンのコルドファン地方発祥の、小ぶりで球形のコロドファン・メロン(Kordofan melon)が、遺伝的に現代栽培種に近縁である可能性が高いことが報告された。

・この報告は、スイカが東アフリカ起源である可能性と、コルドファンメロンはスイカの品種改良に期待を寄せる育種家にとって最適の種であることも示唆している。スーダンのコルドファン地方は、エジプトからの地理的距離もそう遠くはなく、古代エジプトの壁画の古代スイカと共通の祖先を持つ可能性もある。なお、コルドファンメロンは、大きさ15cm程度で、外皮には薄い緑色の縞模様があり、内部の果肉は白色でやや甘味がある。古来より農業を営む過程で、コルドファンメロンが他の種よりも甘いため、人々は人工交配を重ね、より美味しい改良種を作り出してきたことも考えられる。

・スイカ属(Genus Citrullus)の7品種のゲノム解析の結果、コルドファンメロンが現代スイカ塩基配列と共通する部分が、西アフリカのエグシ・メロンを含め他の種よりもはるかに多いことが判明した。これはコルドファンメロンが、現代スイカにより近縁であることを示唆している。すなわち、コルドファンメロンと現代スイカは、共通の祖先種から枝分かれした種同士であることを意味する。

・作物の栽培種の野生近縁種は、育種家にとっては、栽培種を活性化する可能性を秘めた遺伝子の供給源である。野生種由来の新しい色彩、乾燥耐性、病害虫耐性などに関連した遺伝子情報を、(交配や遺伝子組み換えにより)現代の栽培品種の遺伝子プールに持ち込むことも可能である。コルドファンメロンは、現在スイカに比べて強い病原耐性を持ち、その形質に対応する遺伝子領域も異質であることが最新の研究で報告されている。

・現代の農作物の野生近縁種の多くが、人類による撹乱と気候変動の影響により、絶滅の危機に瀕している。野生近縁種の損失は、品種改良の機会を奪うことを意味する。

 

キーワード

wild watermelon 野生スイカ  
21世紀現在の栽培種のルーツは、スーダンのコルドファン地方にあると考えられている。野生のスイカは、ほとんど甘みがないが、水分だけは胎座部分に大量に蓄えられている。しかし、胎座部分は栽培種と異なり多くの隙間があり、現在の栽培種のようなリコピンを豊富に含んだ胎座が隙間なくある状態ではない。この野生種から現在の栽培種へと至る過程は、17世紀の画家ジョバンニ・スタンキ(Giovanni Stanchi)や、ジュゼッペ・レッコ(Giuseppe Recco)が描いたスイカ静物画に見ることが出来る。また、スイカは水分の反応に敏感で、土壌の水分量が過多になると、現在の栽培種でも果実の中に栄養や水分を送るための維管束の管が極端に広がり、内部が、原種に近いような模様のスイカになる。

イカは元々、自生地が乾燥地帯であるため、野生動物は水分を目当てにスイカの果実を摂食することになり、胎座の水分ごと種子を飲み込んで糞とともに排泄し、種子散布が行われる。人類によるスイカの利用もこの水分を目当てに始まり、同時に脂肪と蛋白質に富んだ種子をも食用にするようになったと考えられる。(Wikipedia

 

Kordofan region コルドファン地方
コルドファン(クルドファン、Kurdufan、Kordofan)はスーダン中央の地域。コルドファンの南端は南スーダンとの境目となっており、境界線に位置するアビエイが石油を産出することから、その帰属をめぐって激しい南北対立が繰り広げられている。(Wikipedia

 

 

 
 
 
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