Study: The Largest Comet Ever Moves Closer to Earth. New York Times. Intl. Weekly. July 18, 2021

タイトルは、「最大級の彗星が地球に接近」

・先月(6月)に、塵と氷を含んだ核を持つ、直径100〜200 kmの彗星が観測された。マンハッタン島に換算すると5個分、ハワイ島よりも大きなサイズである。米ペンシルベニア大学の大学院生と教授の名前を取って「バーナディネリ・バーンスタイン彗星」(C/2014 UN271彗星)と命名されたこの彗星は、観測時点で、1990年後半に観測されたヘールボップ彗星の2、3倍はあることが確認された。

・C/2014 UN271彗星は、海王星の軌道内に存在する。今後10年で太陽系の内側に突入することが予測されている。この彗星の氷は太陽の直射を受けて気化する。これにより、ガスが発泡し、光を放つ。2031年には、太陽から19億キロ離れた位置の土星付近を通過した後、再び冷たく暗い銀河へと帰っていく。

・探査機を送り込むことは考えにくいが、今後20年は、地球から32億キロ離れた位置にある彗星に望遠鏡を向けて、その激しく燃えて消えゆく姿を観察できる。

・一般的に、彗星とは、太陽ができた頃、惑星になりきれなかった「残骸」のうち、主に氷でできた小さな天体のことである。そして、水と有機物を太陽系の惑星にもたらす可能性もある。この彗星を調査することで、彗星からもたらされる物質に関する謎を解明するチャンスにもなる。

・2014年〜2018年の観測画像によれば、この彗星は氷でできており、太陽系を取り囲む原始宇宙の岩屑の広範囲の”殻”である、オールトの雲から生じた可能性があると考えられた。この点は、彗星としては特に珍しいものではなかった。しかし、6月19日の科学者らは、海王星よりもサイズが大きく、太陽方向への軌道に乗った際に氷がガスに変化すれば観測史上最大の彗星になる可能性があることを発表した。

・太陽を一周するのに約300年かかると予測される。300年前の人類の技術では観測できなかったし、300年後まで生き延びる人間もいない。そう考えると、貴重なチャンスである。

2031年の太陽系接近の際は、19億キロメートル彼方という距離であるが、太陽にして接近し、氷などがガスとなって活動を始めると、彗星の周囲を取り巻いて明るく広がる「コマ」や「尾」を持つ彗星として、一般の天体望遠鏡でも「一瞬の煌めき」くらいは観察できる可能性がある。ただし、ヘール・ボップ彗星のように地球から肉眼や双眼鏡で観測できる、いわゆる「天体ショー」ではなさそうだ。

 

キーワード

Comet Hale-Bopp ヘールボップ彗星
1995年7月23日に米国のアマチュア天文家アラン=ヘール、トマス=ボップが発見した彗星。1997年2月から5月にかけて地球に接近し、20世紀最大級の明るい彗星として注目を浴びた。(Wikipedia

 

Coma コマ

彗星の尾(tail)は、ガスと塵に分かれている。頭部を取りまいて光っているのもガスや塵で、この部分をコマと言う。コマの中心に核(nucleus)がある。核は主に氷でできていて、塵で汚れた「雪だるま」のような天体である。太陽に近くなるとその熱でガスや塵が放出され、太陽の光で輝いて見える。(小学館の図鑑NEO宇宙)

 

Oort cloud オールトの雲

海王星以遠の太陽系外縁部には太陽から数万天文単位付近を大きく球殻状に取り囲む氷微惑星の集まり「オールトの雲」が広がっている。ダークエネルギーサーベイではこれまでにも太陽系外縁天体を発見しており、2014年から4年間のデータでは316個のTNOが見つかっている。しかし最初の観測データが2014年であることから「2014 UN271」と仮符号をつけられた天体は、長大な周期とこれまで観測された中でも最大のものとなる彗星核という特徴が際立っていた。(Yahoo