Study: 荒川神社 井ノ口の狭間彫刻を鑑賞する

湯沢山 茶くれん寺(南側の狭間彫刻)(東側の狭間彫刻)

京都・千本通今出川に「湯沢山 茶くれん寺(ゆたくさん ちゃくれんでら)」と呼ばれる小さなお寺がある。正式な寺名は「浄土院」。秀吉の九州征伐の勝利と、邸宅の聚楽第の完成を祝って、北野天満宮の境内で「北野大茶会」という茶会が催された。北野天満宮に向かっていた秀吉は、浄土院の前に差しかかった時に、名水が湧き出る井戸があることを思い出し、立ち寄ることにした。秀吉は寺に入るやいなや、住職にお茶を所望し、住職が出した茶をあっと言う間に飲み干し、もう一杯所望した。高名な茶人でもある天下人の秀吉に対して、未熟なお手前のお茶を出し続けるのは、失礼だと思い、境内の湧水をそのまま味わっていただこうと思い付き、白湯(さゆ)にして秀吉に出した。出された白湯に不思議に思いながらも、秀吉は白湯を飲みほし、お茶を所望した。しかし、住職は、また白湯を出した。このやり取りが何度か続いたので、そのうちに秀吉は住職の気持ちを察し、大笑いし、「この寺は、お茶をくれと頼んでいるのに、白湯ばかり出して、お茶をくれん。湯たくさん、茶くれん」と、陽気に言い放ったという。

井ノ口(播磨)バージョン:秀吉らの軍は、三木氏が支配する英賀城を攻め落とした。井ノ口の南にあった宝林寺(現在の法輪寺)では、いつ秀吉が立ち寄ってもよいように、お茶を用意していた。そこに、平侍のような出立ちで秀吉が立ち寄り、目にとまった茶を所望したが、庄屋らは、「秀吉様に差し上げる茶ですので、あなた様には差し上げることはできません」と断り、白湯を差し出した。この行動に大笑いした秀吉が、自分が秀吉であることを打ち明けると、庄屋らは仰天し、すぐさま、茶を差し上げたという。
観るポイント:秀吉の風貌は、勝ち戦直後でもあり、陽気な姿が描かれる。住職との対比がいいコントラストになっている。互いに相手の気持ちを思い計り、「礼」節をわきまえたよき場面である。

 

忠臣蔵・刃傷松の廊下(にんじょうまつのろうか)

京都から下向した勅使の接待役を命じられていた播磨国兵庫県)赤穂の藩主、浅野内匠頭(たくみのかみ)長矩が江戸城松之廊下で高家吉良上野介(こうずけのすけ)義央に斬りつけ傷を負わせた事件。取り押さえられた浅野長矩は田村家にお預けとなり、即日切腹を命じられ浅野家は断絶した。
この事件と、大石内蔵助以下47人の義士による仇討ちは「忠臣蔵」として脚色上演されて人気を呼び、その後も小説・映画などの題材となった。
観るポイント江戸城松の廊下で無防備な吉良に刀で斬りつける浅野。脇差で襲ったとの説もあるが、彫刻では長い刀で描かれることが多い。切腹(死)を恐れず「義」を重んじ主君の仇を討った赤穂浪士の厚く、切ない物語である。

 

川中島の戦い(西側の狭間彫刻)

戦国時代に、北信濃の支配権をめぐり、甲斐国(現在の山梨県)の戦国大名である武田信玄武田晴信)と、越後国(現在の新潟県)の戦国大名である上杉謙信長尾景虎)との間で行われた数次の戦いをいう。双方が勝利を主張した結果となった。第4次川中島の戦いで、白頭巾の上杉謙信が自ら武田軍の本陣に突入し、武田信玄に一太刀浴びせ、それを信玄が軍配団扇で受け止めたという有名な名勝負の逸話がある。
観るポイント上杉謙信武田信玄の一騎打ちのシーンとして描かれる。馬上から太刀を振り下ろす上杉謙信と軍配団扇を握りしめる武田信玄が対峙する。「智」将同士の歴史的に残る戦である。「天と地」の構図としても観ることができる。

 

常盤御前伏見の里(北側の狭間彫刻)

平治物語」に題材にした作品。常盤御前は院に仕える女房であったが、たいへんな美女で、院で行われた美人競べに選ばれるほどであった。17歳のとき、源義朝の側室となり、嫁入りし、3人の子ども(今若・乙若・牛若)を生む。義朝が平治の乱に義朝が謀反人となって逃亡中に殺害され、23歳で未亡人となる。3人の幼子の手を引き、雪中を逃亡し大和国奈良県)にたどり着く。その後、都に残った母が捕らえられたことを知り、三人の子を連れ自首しようと京へ向かう。その途中、京都市伏見区奉行町付近で捕えられ六波羅に引き立てられた。主であった九条院の御前に赴いてから清盛の元に出頭する。出頭した常盤は母の助命を乞い、子どもたちが殺されるのは仕方がないことけれども子ども達が殺されるのを見るのは忍びないから先に自分を殺して欲しいと懇願する。その様子と常盤の美しさに心を動かされた清盛は頼朝の助命が決定していたことを理由にして今若、乙若、牛若を助命したとされている。
観るポイント:3人の幼児の手を引きながら雪の中を行く常盤御前。「強い母の姿」を観る。自他のへだてをおかず、一切のものに対して、親しみ、いつくしみ、なさけぶかくある、思いやりの心を持つ常盤御前の「仁」義を描いた話である。

 

 

 

 
 
 
 
 
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