一つの光〜ディープ・エコロジー

先日から,「保全生物学とは何か」という命題についてずっと考えていて,あまりに答えが見つからないものだから,少し焦りを感じた.そんな簡単に答えの見つかる問題でもないということだけど,再来週の木曜日にはゼミで議論をしなければならない.自分なりには,色々と本を読んでみたけど,どれも月並みなことばかり書いていて,「はいはい」って言いたくなる気持ちで一杯になってしまった.
しかし,じっとしていて棚からぼた餅が落ちてくることも少ないので,ジュンク堂に行ってきた.それで,暗中模索状態で,本をパラパラと読んで行くと,一つ面白い本に出会った.それは,「ディープ・エコロジー」という本だ.
ディープ・エコロジーに関しては,森岡先生の本でも取り上げられていて,興味深い環境思想だと思っていた.これに関してもフィーリングの合う本だと感じた.環境保護運動のあり方を提案している.哲学的な考察が多い.
それにしてもどうなのだろうか.僕たちは生態学について日々学んでおり,ある意味では,「純粋に」生物多様性の大切さがわかっている立場の集団だ.そして,保全生物学は,生態学的知識を基礎にして,さらなる実践を含めた学問であるとされている,机上の空論だけでは終わってはいけない.ただし,この実践という言葉に注目する必要がある.なぜなら,頭の中で考えた理論が,現実的かどうかという問題だから.保全生物学でいうところの,「現実」という言葉が含む意味は非常に多様で,巨大なものだ,なぜなら,人間,その社会,生物,資源など,地球上のすべてのものについてのことだから.あまりに多様すぎて,一言では言い表せない.だからといって,環境について大切さを感じている人が,何もしないというのは,あまりに無責任すぎる.
ここで,もっと根本的なところを探ってみようというのが,「ディープ・エコロジー」思想だと思う.「〜思想」や「〜学」という以上,人の頭の中の考え方なのだから,その考え方とはどういったものかと考察する必要がある.
もしかすれば,バリバリ理系頭の人は,このようなスタンスを嫌うかもしれない.「概念に始まり概念に終わる」,「人の考え方に多様性はほとんどない」といったように.そしたら,僕の方から問いたい.「ガンジースターリンの考え方は同じなのか」と.少なくとも僕は違うと思っている.
世界中で生態学の成果が同一の方向を指し示している.その方向性を言葉で,あるいは考え方として表現したのが,ディープ・エコロジーだ.

ディープ・エコロジー―生き方から考える環境の思想

ディープ・エコロジー―生き方から考える環境の思想