生物多様性条約とGM作物

国連生物多様性条約の締約国会議(COP10*1)が、来年10月、名古屋で開催されます。192カ国が参加し、絶滅が危惧される生物をいかに守るかが議論されます。この中で、遺伝子組み換え(GM)作物の規制も焦点の一つとされています。


日本農業新聞11月3日の総合欄に、ドイツの分子生物学者、クリスティーヌ・ヴァイツゼッカー氏のインタヴューが載っていましたので、要約します。


GM作物の生物に与える影響について
農薬耐性や殺虫性の強いGM作物が野外の植物と交配し雑草化した場合に、除草剤の効かない「スーパー雑草」が生じることが危惧される。在来の動植物を絶滅させる可能性ある。具体的な事例として、GMナタネの被害が挙げられる。


農業生産への影響について
スーパー雑草および耐性昆虫の防除のために、農家はさらに農薬を使用することになり、結果的に、周辺の生態系への悪影響が広まる可能性がある。


COP10の開催を臨むにあたって
カルタヘナ議定書*2が2003年に発効され、GM作物が輸入国の生態系を汚染し、輸入国が清浄化に費用を掛けた場合、輸出企業に損害賠償を求められるようにするルールが07年までに決められるはずだったが、いまだに決まっていない。そのルール作りについて議論することが重要である。


議長国日本に何を求めるか
ドイツ・ボン(08年)でのCOP9では、カルタヘナ議定書のルール採択が合意目前であったが、輸出国のアメリカ、カナダ、アルゼンチンが強行に反対し、まとまらなかった。しかも、日本は3国の側に立って合意を阻止し、国際社会から非難を浴びた。日本のリーダーシップが問われることになる。

*1:COP(Conference of the Parties)とは、国際条約の締約国が集まって開催する会議のこと。生物多様性条約では、条約の締約国が概ね2年ごとに集まり、各種の国際的な枠組みを策定するCOPが開かれている。COPに併せ、関連する議定書の締約国による会合MOP(Meeting of the Parties)が開かれる。生物多様性条約のMOPは、カルタヘナ議定書(Cartagena Protocol on Biosafety)締約国会合のこと。http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/cop/cop.htmlより

*2:生態系のバランスを崩さないよう、人為的に作られた新しい生物(遺伝子組み換え農作物、微生物など)の国境を越える移動に関して一定の規制が必要であるとし、環境へ導入する場合の適切な管理や評価制度の整備について国際的な枠組みを導入した決議。1995年のCOP2(ジャカルタ)で合意され、1999年コロンビアのカルタヘナで開催された特別締約国会議で討議され、2003年に発効。2009年6月末現在156の国と地域が加盟している。http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/cop/convention.htmlより