アンパンチ!(サイエンス・コラム)

「あんぱ〜んち!」言葉を覚え始めた甥がよく口にする言葉です。神戸にあるアンパンマンミュージアムへ親に連れて行ってもらったが楽しかったようです。


アンパンマンというアニメは、よくできた内容だと思います。個人的にもかなり好きです。故やなせたかしさんの人間性の深さが映し出されているようにも思います。


アンパンマンの宿敵は、ばいきんまんドキンちゃんです。ばいきんまんは、そのままばい菌のことだし、ドキンちゃんは、「土菌」に由来しているのではと思います。


子どもに対するしつけとして、外で遊んだ後は手洗い・うがい・体を洗うこと、食事の前は、手洗いをするなど、手や体を清潔に保ちましょうという教訓が含まれています。


ところで、ばい菌とは、物を腐敗させたり,人畜の病気の原因となる,有害な微生物の通俗的な呼称と定義されています。では、英語ではどうでしょうか。「Bacteria(バクテリア)」は「細菌」を意味します、「Germ(ジャーム)」は「細菌・病原菌・ばい菌」を意味します。ここで面白いのが、バクテリアには、有害・無害に関係なく細菌・菌全般が定義に入っていることです。ジャームの方は、「有害な」というニュアンスが入っているように思います。


実は人間の体の表面はバクテリアだらけです。成人にもなると、人体を構成する細胞の数の10倍ものバクテリアが存在しています。この事実を子どもは理解できるでしょうか。


バクテリアの種類も多種多様で、ジフテリア破傷風コレラなど致命的な病気を引き起こすものもあります。その一方で、人間の生活はバクテリアとは切っても切れない縁があります。善玉のバクテリアは、他の害のあるバクテリアと戦う手助けをしてくれるし、食べ物の消化を助けてくれることもあります。チーズやヨーグルトを発酵させるのに使われたり、、、そうそう、愛犬のチーズやバタコさんにはそういう意味が込められているのかもしれませんね。お酢、しょうゆ、ワイン、納豆にも善玉バクテリアが活躍しています。製薬でも使われていますし、下水や汚染物質の処理にも使われています。


アンパンマンが完全にばいきんまんドキンちゃんを殺してしまわないのは、ただ物語が終わってしまうからだけではないように思います。そこには、作者の慈悲の心と、悪玉のバクテリアはいつも人間と隣り合わせに潜んでいるという科学的な意味も込められているように思います。


アンパンマンばいきんまんは、これからもヒトとバクテリアのように、切っても切り離せない宿命のライバルとして、アンパンマンとチーズ、バタコさんとは仲の良い家族として、物語は続いていくでしょうね。

はりま里山研究所企画「サイエンスコラム」
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