Study: Locust Swarms Plagued By Tech / New York Times Intl. Weelky (May 9, 2021)

タイトルは、「テクノロジーによって悩まされるバッタの大群」。

サバクトビバッタは、アフリカ北部・東南アジア・中東では、通常、個体ごとに距離を保って生活しているが(孤独相)、雨季の訪れとともに体色が薄茶色から鮮やかな黄色に変化し(群生相)、1平方kmあたり600万個体以上の密度の群れをなす。一つの大群によって加害される食物は、人間1万3千人分の食料に相当する。

・蝗害(こうがい)に至るまで2年間の生成工程を要する。2018年、サウジアラビアでサイクロンにより大雨がもたらされると、個体数は8千倍にも増加した。2019年夏、西向きの風により個体群はアフリカの角(東部の突き出た地域)へと押し流された。到着したアフリカの大地の湿った気候によりさらに個体群密度が高められた。さらに、ソマリアでの季節外れのサイクロンがそれに拍車をかけた。

ケニアではFAO担当者がバッタ防除アプリを開発中であった。まずは野外データの収集から始めた。一方、アメリカの大学の昆虫学者が作物害虫を追跡するスマホアプリeLocustを開発した。このアプリの機能は、野外で発見されてバッタの個体のステージを、成長段階(ステージ)ごとの写真と照合させるものである。GPSにより地理的情報とともにフィードバックされる。昨年にはアフリカ東部では24万個体のサバクトビバッタの個体情報がセンターに送信された。

・51 Degreeは、野生動物の保護を中心にサービスを提供する民間企業であるが、そのノウハウを蝗害防除に応用した。EarthRangerというフリープログラムを使い、地理情報を編集、解析した。慈善団体のVulcanは、eLocustのフィードバックデータと地理情報を統合させ、殺虫剤の空中散布用に利用した。

・2020年6月の時点では、西側のセネガルまで続くサヘル地帯へのサバクトビバッタ流入を防ぐことができている。被害は完全になくなったわけではないが、航空機28機を駆使した上空からのモニタリング部隊の尽力により各地で防除の効果が出始めている。

・FAOの見積もりによると、アフリカ東部において、金額に換算すると15億ドルに相当する農産物と、3千400万人の住民の生活を保護ができたことが報告された。

 

キーワード

・Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)国際連合食糧農業機関

飢餓の撲滅を世界の食糧生産と分配の改善と生活向上を通して達成するのを目的とする、国際連合の専門機関の一つである。

 

locus plague 蝗害(こうがい)
トノサマバッタなど相変異を起こす一部のバッタ類の大量発生による災害のこと。

 

・sahel region サヘル

サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域である。主に西アフリカについて用いられるが、場合によりスーダンアフリカの角の諸地域を含める事もある。サバクトビバッタが発生しやすく、しばしば蝗害による飢饉に陥ることがある。2004年には西アフリカ一帯でサバクトビバッタの大量発生が生起し、地域に甚大な被害をもたらした。主に焼畑農業を行い、ひえやもろこし、トウモロコシ等の穀物を育てている。また、灌漑施設が殆ど普及していないため、雨水に頼っているがその日暮らしも危ういレベルである。

 

・Desert locust サバクトビバッタ、砂漠飛蝗、学名はSchistocerca gregaria

砂漠および半砂漠地帯に生息しており、地理的にはサハラ砂漠に位置する西アフリカから中東、東南アジアにかけて確認されている。通常時は世界30か国ほど、また大発生時には世界60か国(世界の陸地の20%相当の面積)に渡って生息・飛来すると言われ、飢餓や貧困の原因の一つになっている。『聖書』や『コーラン』にも被害が記載されるほど、古くから恐れられているが、大発生のタイミングは不定期である。

 

・gregarious phase 群生相

サバクトビバッタが孤独相 (solitary phase/単体で生息しておとなしいモード) から群生相に相変異すると、黄色に黒色が混じった体色に変化し、体長と比して翅が長くなる。