Music: Blackwater Park 20th Anniversary Edition Deluxe Dark Smokey Transparent / Opeth (2021)

2001年発売のオペスの5枚目のスタジオアルバム「Blackwater Park」の20周年記念盤が発売されました。レコードの盤のデザインは、ダークスモーク色です。このアルバムは、メンバーも振り返るように、バンドの方向性の転換のきっかけになりました。プロデューサーとして迎えたSteven Wilsonの手腕に負うところが大きく、バンドの音楽的センスを一気に引き出しました。スウェーデンフィンランドノルウェイの北欧の地は、デスメタルの聖地といわれるほどバンド活動が盛んで、オペスのようにデスヴォイスを多用し、ダークな世界を描き出すバンドは特に珍しいわけではありませんが、ひたすら轟音・爆音のデスメタルとは一線を画するのは、その曲構成の複雑さ(プログレッシヴ・ロックの要素)とメロディセンス(AOR(ソフトロック)的な聴きやすさ)です。ただし、メジャー路線に転向することと、アンダーグランドのコアな世界に留まることとの間には、当然ジレンマがつきまといます。古くからのファンが離れてしまいます。その一方で、世界的に有名になり、新たなファンを獲得する可能性もあります。どのバンドもこのジレンマに苦しみます。

オペスが取ったのは、メジャー路線です。Steven Wilsonの起用がそれを物語ります。実際私も、4枚目までのオペスが好きだったので、5枚目での変化はファンとしては寂しい気持ちにもなりました。しかし、若気の至りではありませんが、勢いだけで聴ける時期と、やはり音楽的に高度なものとでは、結局、音楽的に高度であり、芸術性の高いものほうが、長く付き合えるというのも人間の心理としてはありそうです。それなら、ABBAのように、世界は、キャッチーでクリーンな音楽だけでいいんじゃないかと言われると、そう物事は単純にはいかないのも人間の難しいところです。複雑で起伏の多いオペスの音楽には、様々な感情が蠢いているようにも思えますし、暗闇の中だからこそ一筋の光がありがたく感じるように、混沌としたもののなかに何か自分なりの光を見出すことに一種の悦びを感じ取ることがあるように思います。ABBAも、もちろん、一個人の失恋や別離の悲しみを芸術として昇華することで多くの人々の心を捉えました。オペスも、耽美な世界観はそのまま維持しつつ、より耳障りのよいパートを効果的に挿入していきました。1日のうちに夜があるように、1年のうちに冬があるように、それはそれで必要なものとして受け入れ、その時にしかできないこと、そこでしか経験できないものを見つけ出せばいいんじゃないでしょうか。なんか人生論みたいになりましたが、オペスの音楽は美しいです。

 


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