Books: シャーロットのおくりもの / E.B.ホワイト

 

河合隼雄さんがお薦めされていたので読みました。英語の原題は、Charlotte's Webです。主人公は、ブタのウィルバーと雌グモのシャーロットです。表紙に描かれている女の子が主人公かと思いきや、この子はファーン・エラブルという名前の納屋の娘です。序盤では主人公と言えるほどに重要な役割を担っており、ウィルバーの命の恩人です。ウィルバーの恩人という意味では、牧場の家畜はみんな命の恩人(人ではないけれど)です。

牧畜文化の欧米らしい物語だと思いました。食べるために育てる。美味しそうじゃないなら価値はないというのが、ファーンの両親や、牧場主たちの考え方です。日本では、食べるために牛や豚を飼うというのは、最近ではそれほど日常的ではないので、ペットとして飼うというイメージを持ってしまいます。といっても、スーパーでは肉は売られているのですが。日本の子どもたちにとっては現実社会とは違った環境ですが、すぐにその世界に入れるのも子どもの特権です。この物語の面白いところは、クライマックスが、納屋の娘ファーンの心の成長でもなく、子豚ウィルバーの命拾いでもなく、雌グモシャーロットの慈悲でもなく、命の花がぱっと開くのは、シャーロットの子どもや孫たちが毎年繁殖しているところです。春になると、卵からたくさん孵ります。その何気ない繰り返しが、最終盤で自然現象として描かれます。ウィルバーはその度に、シャーロットのことを思い出します。その様子が、心にじーんときます。ウィルバーに感情移入してこんな気持ちになるためには、やはり冒頭からのウィルバーを巡る周りの人や動物たちとの関係がなければ、唐突にはクモの繁殖だけではなかなか感動できないかもしれません。

テーマは、難しく言いますと、「死と再生」です。河合隼雄さんは、十牛図に通じるものがあると分析されており、第8図で何もないと思ったときに、何かが生じてくる。死の後に生がある。その意味で死というものをすごく考えさせる作品であると解説されています。

2006年には映画化もされています。