Books: マルチメッセンジャー天文学が捉えた 新しい宇宙の姿 宇宙の物質の起源に迫る/ 田中雅臣(2021)

 

大学の生協に立ち寄ったついでについつい書籍コーナーを見てしまいました。見つけてしまうと、買ってしまうのが新書です。本は迷ったら買うようにしています。こういう気持ちにさせてくれる大学キャンパスという環境は、とてもいいと思います。

マルチメッセンジャー(多波長)天文学とは、可視光、赤外線、電波、X線ガンマ線重力波ニュートリノなど様々なシグナルを駆使して宇宙を研究する学問領域のことです。

宇宙は途方もない時空間であり、星ひとつにしても、その一生に比べれば人類が誕生してからの時期は短く、さらに人の一生は一瞬とも言えないほど短いでしょう。しかし、銀河系には数千億もの星があり、様々な段階の星を観察することで、星の一生の一般論が導けるはずです。

2015年には重力望遠鏡LIGOにより重力波が史上初めて捉えられました。2017年には重力波を放った天体を光学望遠鏡でも観測されました。2011年からは南極に設置されたIceCube観測所がニュートリノを観測し、2017年にはニュートリノが放った天体の候補が通常の望遠鏡でも捉えられました。観測技術が飛躍的に発展したお陰で、見えなかったものが見えるようになり、理論的な計算が主体のイメージの強かった天文学が、検出器を利用した観察が導入されつつあります。ミクロ生物学のごとく、測定値をもとに、対象の物質が「存在する」・「存在しない」の定性評価、さらに「どの程度存在するか」の定量評価により、その物質を生じさせたガンマ線バースト超新星爆発などの現象、核融合などの反応、銀河系、ブラックマターなどの実体の把握に向けて動きつつあります。

ニュートリノの観測も日々発展しており、日本のカミオカンデからスーパーカミオカンデ、そしてハイパーカミオカンデは、2027年の実験開始を目指しています。南極のアムンゼン・スコット基地のIceCubeも検出器を巨大化することも計画しており、近い将来には超高エネルギーニュートリノの観測が実現すると言われています。

見えなかったものが見えるようになり、銀河系には数千億もの星があるのですから、天文学の分野は大忙しですね。確かに、ニューヨークタイムズの国際版のサイエンス面は毎週と言っていいほど宇宙関係の記事が掲載されています。

ぼーと星を眺めるのが好きで、せかせかしないイメージがあったので、高校時代に天文部に入部しましたが、このように考えると、一瞬たりともぼけーとしている暇なんてなく、むしろ一睡もできなくなるのがこれからの天文学かもしれないですね。